「戦術はルーニー」が導いたドロー 万能の10番が示す準決勝への道
ボール支配率7割、前半はバイエルンが圧倒
バイエルン相手に価値あるドロー。ユナイテッドのチャンスはほぼすべてルーニーから生まれた 【Getty Images】
3冠王者の相手に、マンチェスター・ユナイテッドの苦戦は必至とみられた。だが、ホームスタジアムで戦ったチャンピオンズリーグ準々決勝ファーストレグでの押し込まれ具合は、想像以上のものだった。序盤からバイエルン・ミュンヘンの「偽背番号9」トーマス・ミュラーの動きに惑わされ、パトリス・エブラ不在の左サイドにおいては、アリエン・ロッベンに加えて逆サイドのフランク・リベリにまで顔を出されて混乱は増す。分かっていても止められない、ロッベンの切れ込んでからの左足シュート、または逆サイドに展開された先には攻め上がったダビド・アラバがボックス内まで侵入と、振り回される時間が続いた。その蹂躙(じゅうりん)ぶりは、当のバイエルン自身の予想さえも上回るものだったかもしれない。前半のボール支配率は7割と、バイエルンが圧倒していた。
攻撃の鍵を握ったルーニー
ユナイテッドのチャンスは全て、万能の背番号10を起点、あるいは基点として生まれていた。ペナルティーボックスの幅の中で多くの時間を過ごし、機会は数多くない攻めのボールを受けて、パスの出し手ともなる。
苦しい前半最大のチャンスは、ルーニーが自陣から送った長い縦パスがつくり出した。40分、ハーフウェーライン手前でボールを受けたルーニーは、すかさず鋭いパスを送る。バイエルンの2人のセンターバックの間を突いたパスに、ダニー・ウェルベックが走り込む。ジェローム・ボアテングがバランスを崩した裏でボールを受けた快足FWのシュートは、バイエルンGKマヌエル・ノイアーの好セーブに防がれた。ため息がスタジアムを包んだが、間違いなく前半最大の見せ場ではあった。
その5分後にも、ボックス幅の中でルーニーが生きる。左サイドからライアン・ギグスが早めに入れたボールを、ヘディングでペナルティーエリア手前のウェルベックにきれいに落とす。右へと展開されたボールから、前半唯一のCKが生まれた。
左サイドからスタートしたウェルベックが、ともにトップに並び、またはスピードを生かして追い越してと、前線の基準であるルーニーと攻撃の先鋒(せんぽう)となる。ハーフタイムを挟んで、ギグスから香川真司への選手交代が行われても、ルーニーが鍵であることに変わりはなかった。
事実、ユナイテッドの先制点もルーニーから生まれた。ネマニャ・ヴィディッチがヘディングでゴールネットを揺らしたCKは、ルーニーが送った縦のロングパスがカットされたスローインからの流れで得たものだった。そしてヴィディッチの下がりながらのヘディングも見事だったが、そのCKを蹴ったのもルーニーだった。