田中将のストレート、ダル3年目の再挑戦 2大エースの2014 吉井理人氏が分析

構成:スポーツナビ

生命線となる球種はストレート

吉井氏は田中の「生命線はストレート」と断言。ストレートがしっかり投げられないと、伝家の宝刀スプリットなどの変化球も効いてこないという 【写真は共同】

――田中投手の投げた球種の1つ、1つに関してはどのような印象をお持ちになりましたか?

 良いと思いますね。

――やはりスプリッターが田中投手の生命線になりそうですか?

 いや、ストレートですね。まっすぐのコントロールが今のところすごく良いですね。ダルビッシュの例を挙げて言いますと、ダルも1年目の前半戦はファストボール系のコントロールが悪かったときはどうしようもなかったんですが、そこが安定しだしたら、他のボールも良くなった。マー君は今のところ、ストレートがしっかり自分の思うコースに投げられていますし、現時点では心配はないですね。

――やっぱり基本であり、野球の原点でもあるストレートにかかってくる、ということですね。

 まあまあ、そうですね。一番多く投げる球でもありますからね。

――メジャーリーグだと150キロ後半の球をバンバン投げるピッチャーがたくさんいて、それでもスピード負けせずにガンガン打ってくるバッターがたくさんいるので、田中投手の場合はどちらかと言えばまっすぐで勝負するよりも、スプリッターで翻弄していくのかなと思っていました。

 もちろん、作戦としてはそうかもしれないですよね。ただ、基本としてはストレートがしっかり投げられないと、そういった変化球も効いてこない。それにピッチングフォームのメカニズム的にも、やっぱりストレートをしっかり投げられないと、スプリッターでも腕を振れませんから、ごまかせないですよね。なので、そういう意味でも今、マー君の生命線はストレートだと言っているんですよね。例えば投球の割合で、パワーピッチャーがまっすぐ70パーセントだとして、マー君のストレートが半分だからと言って、それは変化球主体のピッチャーということにはならないじゃないですか。そういう意味なんですよ。

――なるほど。吉井さんの強調する「ストレートが生命線」という意味がよく分かりました。

 ただ、たぶんマー君もパワーピッチャーと同じくらい、平均的にファストボールを投げているはずですよ。フォーシーム、ツーシームを合わせると、50パーセントを越えてくるくらい投げているはずです。ちなみに、僕が現役時代はファストボールが75パーセントくらいでした。というのも、他に投げられる変化球がなかったので(笑)。

――いえいえ、そんなことはないでしょう(笑)。でも、その中で吉井さんの投げるまっすぐは、スピードよりもコースで勝負していたということですね?

 僕はもうコントロールでしたね。もちろん、マー君もそれができるピッチャーですから。

――コントロールが良いと、すぐに2ストライクに追い込むことができるので、その点でもピッチャーが常に有利になりますよね?

 そうなんですよね。追い込まないとバッターがいろいろと考えてくれないので、バッテリーにいろんな作戦があってもボール、ボールから入ってしまっては、もうどうにもならないですよね。いつもピッチャー有利になっておかないと、その配球の作戦はうまくいかない。そういう意味でコントロールが良いのは有利ですし、メジャーのバッターは初球から積極的に来るので、初球のストライクの取り方もコントロールのないピッチャーは苦労するんです。でも、マー君はアウトローにビシーっと決めることができるので、もしかしたら、その球がいつも決まるぞと印象付けたら、初球をフォークボールから入ってもいいかもしれないですし、配球の幅が広がりますよね。

――ここまでのお話を総合しますと、吉井さんの目から見ての田中投手は、コントロールがきっちり決まっている点が一番安心したところ、ということですね。

 ストライクゾーンに投げられるコントロールと言いますか、自分が思ったところに投げられるコントロールがあるので、マー君はよりレベルが高いですよね。活躍できると思いますよ。だから問題は、コンディションを1年間整えられるか、ですね。ボールやマウンドの質はまったく関係ないと思います(笑)。

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