SB大型補強、ロッテ涌井、オリ金子 吉井理人氏が大混戦パ・リーグを斬る
ロッテ移籍の涌井、復活の兆しは…
近年、先発で結果を出していない涌井。吉井氏はコンディションに原因があるのでは、と指摘する 【写真は共同】
ライオンズで投げているときよりも張り切っている感じは見えるんですよね。気分的にはすごく盛り上がっているはずなんですよ。それで結果が出たらいいんですけど、今のところ結果が出ていないので、そうなると自分で……なんて言うんですかね、いらん練習をし始めて悪い方向に行く可能性があるので、そこをしっかりとコーチの方が見極めて正しい練習をさせてあげる必要があると思うんです。だから、気分的にはヤル気になっているし、実力を持っている選手なので、復活の可能性はありますよね。今のところはその兆しが見えていないんですけど、こればっかりは本当に分からないですからね。実力のある選手なので、いつきっかけをつかんでドーンと出てくるかも知れないですし。
――そもそも涌井投手がここ数年、スランプに陥っている原因というのはどこにあるんでしょうか?
これも正直、分からないですね、じっくりと涌井を見ているわけではないので。ただ、涌井がこれを読んだら怒るかもしれないですし、『オマエが何を知ってんねん!』って言われるかも知れないんですが、ちょっと球威は落ちていますよね。そういう意味で、フォームのメカニズムもそうなんですけど、体のコンディションの方ですよね、ちょっと衰えてきているのかな。だからもう1回、しっかりとトレーニングして、やり直す必要もあるかな、と。どこまでトレーニングをしているとか詳しくは僕は分からないので、はっきりとは言えないんですが、自分の経験から、コンディションが落ちてくると実力も落ちてくるというのは絶対に言えることなので、あくまで想像ですが、原因はそこにあるのかなと思いますね。
――でも、実力はあるので、あとはきっかけひとつということですね。
もしコンディションの方だとしたら、それは涌井本人も気付いていることだと思うんですが、それは即効性はないんですよ。地道に鍛えていって、どこかで効果が出るという感じなので、まだその効果が出ていないだけかもしれないですよね。
――なるほど。それだけヤル気になっているということは、涌井選手自身も相当なトレーニングをやっていることと思いますし、開幕カードか、もしくは次のカードで登板したときに効果が現れて、ビシッと抑えることができれば……
そのまま昇り調子になっていく可能性はありますよね。
ルーキー石川歩、井上晴哉に期待大
はい、良かったですね。投げるボールもそうなんですけど、マウンドでの振舞い方がすごく落ち着いていて、ルーキーとは思えないような、すぐ実力を出せそうな、そんな感じがしましたね。ここまでオープン戦で結果も出していますしね。
――石川投手の球では何が印象に残りましたか?
真っすぐが良かったですね。変化球では特にどれがいいというのは分からなかったんですが、ただ、変化球を投げるときにまだ腕が緩んだりするので、そこを慣れてくればと思います。でも、まっすぐはしっかりと投げられていましたね。シーズンに入っても楽しみです。
――ということは、成瀬投手が昨年はあまり良くなかったこともあり、涌井投手もどこまで復活できるかということで、石川投手が柱として活躍する可能性もあるかも、というところでしょうか?
そういう可能性もあるかとは思いますが、さっきも言ったように今年のマリーンズはそういう感じなんですよ。“誰かが頑張るだろう”みたいな。それはみんなが頑張ればたぶん上位に来ると思うんですけど、そこなんですよね。
――“間違いなくこの人!”という確信的なものがまだ見つからない。
そうなんですよ。実績があるのは成瀬と涌井だけなので。唐川もどうなるか分からないですからね。
――はい。あと、ルーキーでもう一人、注目を集めているのが4番に座るかもしれないと言われている“アジャ”こと井上晴哉選手。
あぁ、彼はいいですねぇ。
――最初は“アジャ”というニックネームだったりと、キャラクター的な部分が強く出ているのかなと思いましたが、実力も十分通用すると見ていいでしょうか?
そうですね、僕は以前マリーンズにいたベニー・アグバヤニ(千葉ロッテに6シーズン在籍)とダブってしまいますね。マリーンズにいたころのアグバヤニは故障がちで、動けない大きい人でした。僕は彼がルーキーだったニューヨーク・メッツ時代にチームメートだったのですが、そのころは打って走って守れる外野手だったんですよ。井上くらい大きい選手だったんですけどゴムマリのようなね、身長はあまりないんですけど。昔、ミネソタ・ツインズにカービー・パケットという選手がいたんですが、ああいう感じですかね。でも、パケットはもっと鋭かったかな。
――パケットといえばMLBでも大選手でしたが、それくらいの可能性も井上選手には感じてしまうということですね。
でかいのに、いや、太ってるのに……太ってるって言っていいのかな(笑)。
――この際、そこは言ってしまってもいいんじゃないでしょうか(笑)。
なんか丸いのに(笑)動けるって言うんですかね、本当にゴムマリみたいな感じですよね。弾むような。
――今のプロ野球選手というと本当にシュッとした感じの選手が多いですが、久しぶりにそういう体型の魅力的な選手が現れましたね。
そうですね。柔らかいですしね。始めはルーキーだし勢いだけで打ってるのかなと思っていたんですけど、オープン戦終盤になってもしっかり対応していますからね。スイングも、何て言うんですかね、色んな球に対応できるんですよ。体勢を崩されてもしっかりスイングできたりとか、そういう技術を持っているので、すごく楽しみですよね。
――ここまでの吉井さんのロッテ評を総合すると、不確定要素は多いにせよ、その分、楽しみな選手も多いということになりますか?
特にルーキーを見ていたら楽しいと思いますね。
オリックスは走塁にどこまで意識を高められるか
ここまではオープン戦だからだとは思うんですけど、まだ分かりづらいですよね。これはたぶん、選手も戸惑っていると思うんです。急に今“色”を出したからと言って選手たちもうまく行くかといったら、そうでもないので、こういうのも地道にちょっとずつ意識してしっかりやっていかないと、“色”はついていかないと思いますからね。でも、どうなのかなぁ……バファローズの選手はみんな実力あるから、急にパーンと変わる可能性もあるかもしれないですよね。
――もちろんチームの方針などいろいろとあると思いますから、言いにくい面はあるかもしれませんが、吉井さんだったら“こういう色をつけていけばいいんじゃないか”というものはありますか?
投手力のチームだと思いますので、守り勝つ野球でいいと思うんです。攻撃の方では、走塁ですよね。去年のファイターズもそうだったんですが、盗塁は結構するんですけど、例えばランナー一塁でライト前ヒットで三塁に行けなかったりとか、ランナー二塁でセンター前ヒットで1点入ってバッターランナーが二塁に行けなかったとか、そういったところが結構目立ったんです。そういう細かい走塁をしっかりできるようになったら、チームは変わってくると思うんですよ。ファイターズはそこを今年のオープン戦でかなり意識してやっているんです。去年は全然できていなかったんですけどね(笑)。こういうランニングプレーって、チームにすごい勢いをつけるんですよね。ゲームの流れも変えますから、地味ですけど大事なプレーだと思っています。バファローズはそういうところがあまりできていないように思いますね。
――ヒット1本で1点入るのと、ヒット2本でようやく1点入るのとでは確率的に言っても全然違います。
そう思います。ただ、去年は李大浩がいましたからね。李大浩がヒットで塁に出ると“各停”になっちゃった面もあったと思いますが(笑)。
――その点、今年はヘルマンが新加入しました。
そうなんですよ。ヘルマンが入りましたし、糸井もいますから、今年は盗塁だけじゃない“スピード”が使えるはずなんですよ。だから、攻撃の方ではそこに期待したいと思いますね。ピッチャーはそこそこ頑張れると思うので。
大黒柱・金子に続く投手は誰だ?
金子の後に続くピッチャーが出てこないと、やはり苦しいと思いますよ。
――金子投手の次のピッチャーというと、やはりロッテ同様、ルーキーに頼る面も出てくるのでしょうか?
いやあ、ルーキーはどうかなぁ。それよりも西、ディクソンだと思います。この2人に頑張ってもらわないと、やっぱりローテーションは組めないと思いますね。
――吉井さんの見立てでは、ドラフト1位の吉田一将投手、2位の東明大貴投手にはローテの一角といった過度の期待はまだ酷かな、ということに?
特に東明はたぶん、先発で使わないんじゃないかな。リリーフに回る可能性があると思います。吉田も実力は持っているんですけど、オープン戦を見た感じでは、まだ体が1年間もつかなぁという印象だったんです。ピッチングの方にも体の弱いところがたまに出ていたので、そこをしっかりキャンプから鍛えているとは思いますが、もっと強くなってからの方がいいのかなという気がしましたね。
――身長の高い選手ですが、まだ少し線が細いという感じなんでしょうか?
まだ細いですし、社会人上がりなのでそれなりに強さを持っているとは思いますが、まだちょっと足りない感じがします。
――となると、やはり西、ディクソンの奮闘が必要で、中継ぎ・抑え投手と言えば……
平野ですね。それに佐藤。そして比嘉がめちゃめちゃいいですね。あと、馬原がここに入ってくるかどうかというところでしょう。また、さっきの走塁の話につながるんですけど、去年、バファローズはチーム防御率がリーグナンバーワンだったんですが、確か1点差負けのゲームがやたらと多かったんですよ。それって、やっぱりそういう走塁につながっていたのかなと思いますよね。
――そういう点も含めて、バファローズは実力のある選手は揃っているけど、チームの総合力という面で少し見劣りするかなという評価につながるわけですね。
そうですね、野球がまだ大雑把なところがありますから。森脇監督は絶対に走塁とか細かいことをきっちりできる野球を目指していると思うんですけどね。ただ、それが今年しっかり出てくるかどうかが、まだ分からないですね。その点で言えば、去年のイーグルスは走塁がすごく良かったんですよ。ランニングプレーというのは本当にチームの勢いにつながりますからね。