追いつめられたバルセロナ リーガ連覇へ最後の望みを懸けるクラシコ

復調の兆しはあるものの、不安ぬぐえぬバルサ

クラブ通算得点記録を更新したメッシを含め、チームとして復調の兆しも見せている 【Getty Images】

 一方、バルセロナの置かれた状況は対照的だ。ピッチ外で生じる諸処のトラブルと平行してチームがイレギュラーなプレーを続ける中、既存のシステムが抱える問題点や調子の上がらぬ選手たちに対する疑問は、試合を重ねるごとに強くなってきている。

 ところが先週のCLマンチェスター・シティ(イングランド)戦や週末のオサスナ戦では、7−0の大勝やクラブ通算得点記録を更新したメッシのゴール以上に、かつての美しく強いバルセロナの復活を見る者に印象づけた。

 ここにきて復調の兆しが見えはじめた要因は恐らく、もう1ポイントも失えない後がない状況に追い込まれたヘラルド・マルティーノ監督が毎試合ベストメンバーで戦う賭けに出たからだと思われる。

 MFセルヒオ・ブスケツが中盤の底に構え、その前でMFシャビが攻撃を組み立て、MFアンドレス・イニエスタが創造性をプラスする。3トップは現在最も良い状態にあるFWアレクシス・サンチェスとFWペドロ、そしてメッシの“ファルソ・ヌエベ”。クラシコではケガ明けのDFジェラール・ピケがDFマルク・バルトラの代わりに入ることになるが、現時点での個々のコンディションを見る限り、その他はオサスナ戦で先発した10人を再び先発させるべきだろう。

 セスク・ファブレガスを4人目のMFとして起用しても、FWを1人減らすデメリットを上回るほどのプラスアルファを期待することはできない。

 試合を重ねるごとに輝きを失いつつあるFWネイマールも、万全の状態でクラシコを迎えるとは言い難い。新たなメッシの相棒として前線の質を高めるべく加入した彼は、お互いのケガもあり、いまだにメッシとの連携を高めることができておらず、最近は十分なプレースペースもない状況で単独突破を試みてばかりいる。しかも周知の通り、ピッチ外ではサンドロ・ロセイ前会長を辞任に追い込む要因となった自身の獲得オペレーションを巡る訴訟問題にも苦しんでいる。

三つ巴の争いを続けるにはクラシコでの勝利が必須

 こうした両チームの現状を比較すれば、バルセロナにとって今回のクラシコがレアル・マドリーにとってのそれより遥かに重要であることが理解できると思う。もしこの直接対決でレアル・マドリーとの勝ち点4差を縮めることができなければ、アトレティコ・マドリー戦を含めた残り9試合でその差を覆すのは不可能と見てよいだろう。

 マルティーノ監督はオサスナ戦後の会見で、「クラシコの先発メンバーはほぼ決まっている」と言っていた。だが本当にベルナベウから勝ち点3を持ち帰りたいのであれば、彼は勝つためには何が必要なのか、過去数シーズン以上に手堅く、自信をつけたレアル・マドリーにダメージを与えるためにはどうするべきなのかを今一度熟慮する必要がある。

 たとえクラシコで負けたとしても、順位表におけるレアル・マドリーの優位は保たれる。だがバルセロナがベルナベウで勝利を挙げることができれば、それはライバルに与える大きな打撃となるだけでなく、近年稀に見る三つ巴の優勝争いが最終節まで続くという最高のシナリオを保証することになるはずだ。

<了>

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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