明確化した日本男子マラソン向上の条件=松村、地力向上で東京マラソン快走

加藤康博

スピードとスタミナの融合が成功の鍵

初マラソンに挑戦した宮脇。スピードがあるだけに、スタミナ強化で今後に期待が懸かる 【坂本清】

 初マラソンで注目されていた宮脇は25キロ以降、ペースを落としたがレースを壊すことなくまとめ、2時間11分50秒の15位(日本人6位)。
「すべてのレベルが低過ぎます。(1キロ)2分58秒のペースは3分ペースと2秒しか違わないですが、それに耐えられるだけの練習はできていませんでした。足の状態が良くとも(目標としていた)9分台は難しかったのかもしれません」と振り返る。トヨタ自動車の佐藤敏信監督も「何とか30キロまで粘って欲しかったが、とりあえずスタートラインには立てた。体が丈夫でないので練習量がまだ足りないが、そこを上積みしていけるように」と今後に期待を懸ける。

 一方、藤原は2時間30分58秒で76位と苦しいレースに。フィニッシュ後、開口一番に「これが精いっぱいです」。昨年はずっと体調が上がらず、今大会直前にインフルエンザにもかかった。「初マラソンのつもりで」と臨んだレースは序盤からハイペースに対応し、ロンドン五輪後に故障して以来、初めて「スピードに乗って走れた」と言うが、20キロを過ぎてからは「足がガクガクに」(藤原)になってしまった。来季はトラックでスピードを鍛え直したいと先を見据えた。

 今回、2時間10分を切った日本人5名は、スピードよりスタミナを持ち味とする選手。ロンドン五輪5位の中本健太郎(安川電気)や川内優輝(埼玉県庁)と同じタイプだ。トラック種目で日本選手権上位に入ることができなくとも、スタミナの強化に成功すれば2時間8分台でも走れることを、またも証明する結果となった。

 となると次に待たれるのはスピードランナーのマラソンでの成功である。今回、1万メートルで27分台の記録を持つ宮脇が早い段階で先頭集団から遅れてしまったが、まだ初マラソン。大切なのは松村のように2戦目、3戦目とステップアップしていく事だ。大会後、宗猛日本陸連中長距離マラソン部長は「日本のマラソンが上がっていく条件は、スピードのある選手が、それを生かすためのスタミナ作りに成功すること」と話した。そのノウハウを確立するにはやはり経験が必要だろう。宮脇の今後に期待したい。

<了>

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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