「早めにマラソン挑戦を」変化する流れ=宮脇が東京マラソンで初陣

加藤康博

今大会、初マラソンに挑む22歳の宮脇。どんな走りを見せてくれるか 【写真は共同】

 昨年から「ワールドマラソンメジャーズ」に加入し、名実ともに世界トップクラスのレースとして認知された東京マラソン。23日に行われる東京マラソン2014には、海外から2時間4分台の自己ベストを持つ選手が1名、同5分台が5名エントリー。国内招待選手も若手、ベテランと個性あふれる顔ぶれが並んだ。9月に行われるアジア競技大会(韓国・仁川)の選考会でもある今大会。日本人選手は、世界のトップクラスにどこまで立ち向かえるだろうか。

マラソンに抵抗感が少ない若手選手

 今大会、宮脇千博(トヨタ自動車)が初マラソンに挑む。岐阜県の中京高校を卒業後、トヨタ自動車に入社したのが2010年のこと。高校時代は飛び抜けた成績を残していないが、実業団で大きく飛躍した。2年目で1万メートル日本選手権6位入賞。その秋には同種目でロンドン五輪A標準突破となる27分41秒57の記録を出し、翌春には20歳にしてハーフマラソン日本歴代3位(当時)の1時間0分53秒で走っている。実業団屈指の強豪チームの中で計画的に強化が進められ、4年目で迎える初マラソンだ。

 一時は若い選手がマラソン挑戦を先延ばしにする傾向があったが、それが変わりつつある。昨年は宮脇と同学年の窪田忍(当時駒大3年)が一足先にマラソンに挑み、その1年前には出岐雄大(当時青山学院大4年、現中国電力)がびわ湖で初マラソン日本歴代10位の2時間10分02秒の記録を残す快走を見せている。

 現在、箱根駅伝で優勝を狙うチームのエース格は1キロ2分50秒以上のペースで突っ込み、それを大きく落とすことなく20キロを走りきる。昨年、今年と2年連続で30キロのレースでも学生記録が更新され、ハーフマラソン以上の距離に適性を見せる選手も増えてきた。彼らからするとペースメーカーがいる中、30キロまで1キロ3分少々のペースで進むマラソンにもあまり抵抗感がない。「30キロからは苦しむだろうが、そこまでは何とかなりそうだ」と考えるのである。

 高校から直接、実業団に進んだ選手でも同様だ。どのチームもマラソン練習のノウハウを持っており、レベルの高い先輩選手に交じって日々、練習している。大学以上にマラソンを明確な目標として定め、強化を進める事ができるのだ。今回の宮脇だけでなく、昨年は高校卒業後、入社5年目の新田良太郎(コニカミノルタ)がこの東京で初マラソンを踏んでいる。

中本、川内らがマラソンへの後押しを

 また5000メートルで12分台、1万メートルで26分台の記録が珍しくない世界のトップレベルに対し、日本記録はそれぞれ13分13秒20、27分35秒09と大きな差をつけられている。たしかにマラソンでも世界のトップ50はケニア、エチオピア勢が独占しているが、日本勢はそれに準ずる位置を何とかキープしている。五輪や世界選手権では1国の出場選手数に制限があることもあり、マラソンの方が上位に食い込める可能性を残すのだ。
 事実、12年のロンドン五輪、13年のモスクワ世界選手権で中本健太郎(安川電機)が連続入賞を果たした。この事実が「世界で戦うならマラソン」という思いを抱かせる理由となっている。

 また中本だけでなく、国内屈指の実力を持つ川内優輝(埼玉県庁)が早い段階からマラソンのキャリアを積み、現在の勝負強さと安定感を手にしている事も若い選手の背中をマラソンへと押しているようだ。

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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