帝京大、心からの涙が本気の挑戦へ トヨタに敗戦も「面白くなってきた」

斉藤健仁

「打倒・トップリーグ」を目指した帝京大

帝京大は後半に磯田(右)のトライなどで追い上げたが、「打倒・トップリーグ」ならず 【写真は共同】

 今シーズン、「打倒・トップリーグ」を掲げて、大学生相手に無敗、1月の大学選手権で前人未到の5連覇を達成した帝京大。2月16日から開幕した日本選手権の1回戦で、トップリーグ6位のトヨタ自動車と相まみえた。8シーズン前に早大に金星を献上したトヨタ自動車だけあって、「もしかしたら……」とラグビーファンの耳目を集めた。

 結果は13対38、帝京大にとって今シーズン初の黒星は、惨敗でもなければ惜敗でもなかった。15人中9人が代表もしくは7人制代表経験者で、リザーブには2011年のワールドカップ優勝メンバー(ジェローム・カイノ/NZ)も控える強力なトヨタ自動車の布陣に対し、善戦し、見せ場もあった。だが、勝てる雰囲気はつくることができなかった。

 先手を取ったのはトヨタ自動車。「苦い経験をしているので」と、8シーズン前は選手だった廣瀬佳司監督を筆頭に、かつての教訓を忘れず、油断や慢心はなかった。「僕が入部する前ですが、大学生相手に負けていたので、同じ社会人だと思い、この1週間、準備してきました。自分たちからスイッチを入れようとしました」(フランカー安藤泰洋)と最初から、特にセットプレーでプレッシャーをかける。

密集での攻防は「自分たちの強みと確認できた」

 帝京大は、1カ月間、公式戦がなかったことや正フッカー坂手淳史(2年)の欠場も響き、後手に回る。スクラムでターンオーバーを許し、ラインアウトはマイボールをキープできない。ゴール前のモールも止められないという悪循環で、前半14分までに2トライを献上。31分にもラインアウトの乱れから、安藤にパスをインターセプトされて、トライを許した(0対17)。

 一気に崩れてしまうのか……と頭をよぎったが、大学王者は、ここから真価を見せる。相手のフィジカルを軸にした「アタック・シェイプ」に対し、中盤の選手が前に出て外側へのパスを遮断するディフェンスでプレッシャーをかける。さらに「ブレイクダウンでは社会人の方が経験を積んでいてうまさがあったが、負けている感じはしなかった。自分たちの強みであると確認できた」とセンター中村亮土主将(4年)が振り返ったように、接点は、特に2人目、3人目の寄りが早いときは、決して劣勢ではなかった。

 次第に敵陣でのプレー時間が増えてくると、帝京大の攻撃にリズムが出てくる。「フェイズ(攻撃回数)を重ねればゲインできた」(中村主将)。34分にはPGを決め、前半を3対17で折り返す。さらに、後半は「もう一度、集中力を持って思い切りやろう」と岩出雅之監督に送り出された赤いジャージーが躍動する。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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