田中将大、入団会見で上々の立ち上がり=史上最大級の重圧でのプレーボール

杉浦大介

200人以上の日米メディア、食堂には寿司のサービス

ヤンキース入団会見でユニホームを着る田中。英語であいさつをした後には笑顔も飛び出した 【Getty Images】

「2003年の松井秀喜入団時以来、最大の記者会見」
 2月11日(日本時間12日)のヤンキー・スタジアムにてジェイソン・ジロ広報がそう宣言し、フランチャイズ史に残る田中将大のヤンキース入団会見は始まった。

 場所は通常の会見場ではなく、ゴージャスなVIPルームである「レジェンズ・クラブ」。ヤンキースは200枚以上の取材パスを発行したと伝えられ、内訳は日米のメディアが半々くらいだっただろうか。イベント運営の得意なヤンキースは、食堂で寿司まで振る舞う大サービス。同じく今冬に催されたカルロス・ベルトラン、ブライアン・マキャンらの入団会見とはひと味違うスケールのイベントで、田中の“ピンストライプの日々”はスタートしたのである。

WSで勝つこと――勝利に飢えたファンに好印象

「ハロー!アイム・ベリー・ハッピー・トゥー・ビー・ア・ヤンキー!!(こんにちは。ヤンキースの一員になれて幸せです)」
 ハローの後には笑顔も飛び出した。この微笑ましい田中が第一声を発したシーンは、これから何度も繰り返し流されるだろう。

「気持ちはやはり引き締まります。本当にヤンキースの一員になれたんだなと感じている」、「ニューヨークという街は厳しいところと聞いているが、そこで自分の力を発揮できるように頑張りたい」、「(メジャーでは)対戦したことがない選手がほとんどなので、誰と対戦するのも楽しみです」

 スピーチの後に続いたこれらの一問一答に対する受け答えは、謙虚さを保ちながらも、常に堂々たるもの。目標を聞かれた際、間髪入れずに「ワールドシリーズで勝つことです」と答えたのも良かった。この一連のやり取りは、昨シーズン宿敵レッドソックスに栄冠を奪われ、ますます勝利に飢えたヤンキースファンに間違いなく好印象を与えたはずだ。

大型契約の中で必要以上に厳しくなる周囲の目

 この日に至るまで、“フィーバー”とまでは言わないものの、田中に関する話題はニューヨークでも途切れることはなかった。

 会見前日の10日には楽天時代の登板ゲーム(対巨人戦)が地元テレビで録画放映され、同日には約20万ドル(約2000万円)の飛行機を貸し切ってニューヨーク入りしたというニュースも大々的に報道された。11日の『ニューヨーク・ポスト』紙には、田中が愛犬を抱いている姿までが1面に掲載されている。

 メジャーでまだ1球も投げたことがない投手が、7年1億5500万ドル(約160億円)という途方もない契約金を受け取り、チャータージェットで米国入り。その豪華さに目を奪われるとともに、小さくない懸念も頭をよぎる。これだけ騒ぎが大きくなれば、周囲の目が必要以上に厳しくなることは必至だからだ。

「まだ米国野球未経験ということを考えれば、もしかしたらヤンキースの球団史上最大のギャンブルかもね。金額だけでなく、7年という長い契約だけに、うまくいかなかった場合には苦しむ期間も長くなるんだから」

 つい先日、NBAの取材現場において、顔なじみの記者がオフレコでそんなことを言っていたのを思い出す。同じように感じているメディア、ファンは多いのだろう。莫大な投資、期待感を背負った背番号19は、これから先に相手打者以外との戦いも余儀なくされるのかもしれない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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