勝機を見出す先制に失敗、得点力が鍵=元アイスホッケー女子代表監督が解説

構成:スポーツナビ

パワープレーは課題、収穫は久保の好機演出

ロシアを相手に激しく競り合う鈴木(右) 【Getty Images】

 最後に第3ピリオドについてですが、日本がシュート数で10対3と上回ったように、非常に良い展開でした。開始30秒ほどで床亜矢可選手のロングシュートで同点になりました。五輪のように強敵が相手になると、正攻法ではなかなか得点を奪えません。その中で、人が邪魔になって相手GKのブラインドとなるシュート、ゴール前で角度を変えるシュート、パワープレー(相手選手が反則を犯して一時的に氷上を離れて数的優位に立つ時間帯のプレー)というのは、日本のゴールの形だと思います。床選手はリスト(手首)が強く、直接狙えるシュート力を持っています。あわよくばというシュートが、ブラインドになって狙い通りに入ったシュートだったと思います。しかし、得点後に怒涛の攻撃を見せたのに、また良い時間帯でチャンスを作れませんでした。2度のパワープレーで決定機を作れず、3度目のパワープレーで少しチャンスを作れましたが、決められませんでした。

 そのあと、DFのパック処理のミスで相手選手がノーマークになる場面が2度ありました。1度目はGKが防ぎましたが、やはり強豪を相手に2本もピンチを作ってしまえば、1本は決められてしまいます。少し酷な言い方ですが、パワープレーで決め切れなかったツケが回ってきた形だと思います。1−2の敗戦で、本当によく頑張って良い試合をしたと思いますが、勝つためにはどうすればいいのかという点では、チャンスが作れる時間にきっちりと好機を作って決めるという部分で詰めの甘さを露呈してしまいました。ただ、1−2とされた後に、エースのFW久保英恵選手がゴール前でシュートフェイクをしてパスを出して惜しい場面を演出していたのは、収穫です。第2ピリオドまでは久保選手のセットがあまり機能していないように見えましたが、第3ピリオドにおいては得点も奪い、5対5の場面で数多くのチャンスを作り出していました。ドイツ戦にも期待が持てると思います。

 連敗となったことで決勝トーナメント進出の可能性は断たれました。当初の目標であるメダル獲得はできませんでしたが、順位決定戦で5位決定戦に進むという次の目標に切り替えて頑張ってほしいと思います。五輪や世界選手権などの成績は、通例であれば次の五輪の予選免除等に影響を与えますので、どの順位で大会を終えるかは重要です。ここまでの結果も現実的には想定内のはず。連敗になりましたが、強豪が相手でも自分たちのプレーが通用するという手応えは感じていると思います。その自信を13日に行われる第3戦のドイツ戦で見せてもらいたいです。ロシア戦の戦い方は理想的でした。最初からガンガン行って相手を圧倒するプレーができました。ドイツ戦でも同じ戦い方ができれば良いと思います。中1日が続く過酷な日程によって日本の生命線であるスピードや体力が機能しなくなる可能性は心配ですが、少しでも上位に進んで世界の中での日本の立ち位置をアピールしたい気持ちを選手は持っていると思いますので、しっかりと主張してほしいと思います。

<了>

八反田孝行

SEIBUプリンセスラビッツ(旧国土計画・コクドレディース)監督。現役引退後、同クラブのコーチ、監督を歴任し、全日本選手権優勝5回、準優勝10回に導く。2012年には第1回女子日本アイスホッケーリーグ初代王者に輝いた。13年は連覇を達成。日本代表では92年からコーチを務め、98年長野五輪を経験。99年に監督に就任すると、アジア大会、世界選手権などの国際大会でチームを率いた。02年ソルトレークシティー五輪出場を懸けた予選で敗退し、代表監督の座から退いた。

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