勝機を見出す先制に失敗、得点力が鍵=元アイスホッケー女子代表監督が解説

構成:スポーツナビ

同点のゴールを決めた床。しかし再び勝ち越し点を許した 【Getty Images】

 ソチ冬季五輪のアイスホッケー女子日本代表(愛称スマイルジャパン)は11日(現地時間)、予選リーグB組の第2戦で世界ランク4位のロシアに1−2で敗れ、連敗で決勝トーナメント進出の可能性を断たれた。第3ピリオドにDF床亜矢可が今大会のチーム初得点を決めて一度は同点に追いつく健闘を見せたが、後半にミスから得点を奪われて惜敗を喫した。

 スマイルジャパンの第2戦に見られた課題と修正点は何か。第3戦のドイツ戦、その後の順位決定戦でスマイルジャパンに期待されることは何か。元女子日本代表監督で現在は女子チームの強豪SEIBUプリンセスラビッツを率いる八反田孝行監督に聞いた。

「良い立ち上がり」と「失点」の悔やまれるギャップ

 日本は、第1ピリオドに素晴らしい立ち上がりを見せました。初戦のスウェーデン戦とは違い、選手の動きが軽やかで、アタッキングゾーン(相手ゴールに近いエリア)でプレーする時間を多く作っていました。対照的に、ロシアは初戦のドイツ戦よりも動きが硬いように見受けられました。立ち上がりの出来を考えると、勝機を見いだすポイントは「先制点の奪取」だったと思います。先に点を取られて追いつくという展開では、どうしても取り合いになってまた相手に取られてしまうことも多いものです。そういう形では、勝利の女神がロシアに微笑むことは十分に考えられるところでした。日本のペースで進んだ割には、なかなか決定的なチャンスまで持っていけなかったことが悔やまれます。

 良い時間帯に好機を作りきれなかったことが、一瞬の隙からニュートラルゾーンでパックを奪われ、味方選手がGKのブラインドとなるミドルシュートで先制点を奪われてしまうという展開につながってしまったように感じました。失点後の幻のゴール(※第1ピリオドの終了間際、FW浮田留衣選手のシュートが相手選手に当たった後、パックが相手GKの背中側に回ってゴールしたように見えた場面があった)については、日本の選手の誰かが近くでパックの位置を見ていれば良かったのですが、見ていた選手がいなかったために抗議することができなかったのではないかと思います。

 パックが転がる前にホイッスルが鳴っていたのであれば別ですが、世界選手権などでも選手が抗議をすることでビデオ判定となり、ゴールと認定されるケースがあり得ます。しかし、今回は抗議がなく、すぐに次のプレーが始まってしまいました。悔しい場面でしたが、このシーン以外にも終盤にFW大沢ちほ選手がノーマークになった場面で決められませんでした。立ち上がりが良かっただけに第1ピリオドで得点が欲しかったという印象です。

大きな展開に揺さぶられた第2ピリオドは誤算

 第2ピリオドは、シュート数で4対21と圧倒される展開になりました。ロシアが長いパスを多用して大きな展開をするようになり、日本が得意とする短い距離で素早く仕掛けるチェックが機能しなくなってしまいました。ロシアはディフェンスゾーンからどんどんと縦に長いパスを出し、アタッキングゾーンではゴール裏のスペースを使って左右に大きく揺さぶってきました。単純にロシアが攻撃のギアを上げてきたという面もあるかもしれませんが、日本は第1ピリオドとはベンチが逆になっていたためにチェンジ(選手交代)も思うようにできず、苦しむことになりました。

 それでも第2ピリオドを無失点で切り抜けたGK藤本那菜の力は大きかったですし、DF陣も初戦よりは良い意味でリラックスしていたのか、気負ったようなところがなく良い守りを見せていました。ロシアのゴール前での精度の甘さに助けられた面もありますが、本当によく頑張って接戦に持ち込んだと思います。ただ、やはり第2ピリオドを一方的に攻め込まれたというのは、誤算だったでしょう。失点はしなかったので直接的な敗因にはなりませんが、接戦を勝ちきるためにはこうした展開をなくして互角に持ち込まなければいけませんので、今後の課題だと思います。

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