「新しい仲間」を増やすためにできること=Jリーグスタジアム観戦者調査2013

宇都宮徹壱

ピッチ外でも「結果」を残した広島

J1連覇の広島は、地域コミュニティへの貢献度も高い評価を受けている 【写真は共同】

 2月6日、JFAハウスにてJリーグスタジアム観戦者調査2013報告会が行われた。これはJリーグが毎年試合会場で行っている、レギュラーシーズンゲームへのアンケート調査を発表するもので、2004年以降の調査結果はJリーグの公式サイトでも公開されている。発表したのは、筑波大学体育系准教授の仲澤眞氏。今回の氏の発表は多岐にわたっているのだが、ここでは特に興味深い調査結果について紹介したい。なお今回の調査はJ1・J2の40クラブのホームゲーム来場者の中から、11歳以上の男女1万7854人にアンケート調査を行い、そのうち1万7286票の有効回答を得ている。調査期間は13年4月21日から10月27日まで。

 最初に発表されたのが「Jリーグとコミュニティ」。質問項目は(1)Jリーグクラブは、それぞれのホームタウンで重要な役割を果たしている、(2)ホームクラブはホームタウンで大きな貢献をしている、(3)サッカーは、若い人たちの生活に、いい影響を与えることができる、(4)サッカー選手は、社会の規範として重要な役割を果たしている、の4つ。それぞれの回答を5段階評定尺度(大いに当てはまる=5〜まったく当てはまらない=1)で数値化した結果、総合での順位は、1位広島、2位川崎、3位仙台、4位松本、5位甲府、6位鳥栖、7位岡山という結果が出た。

 このうち広島は、(2)の項目で2位になった以外はいずれも1位。リーグ2連覇というピッチ上での結果のみならず、サッカーを通じた地域コミュニティへの貢献でも群を抜いている。新スタジアム建設早期実現に向けて、ひとつの説得材料となり得るデータと言えよう。J2勢では、松本と岡山の健闘が際立っており、特に松本は(1)と(3)で3位、(2)で2位を獲得。安定的な人気を裏付ける結果となっている。

観客の男女比は6:4、平均年齢は0.5歳アップ

 次に、Jリーグの観客のプロフィールについて。まずは「性別」の項目から見てみると、Jリーグ全体で男性62.6%に対して女性37.4%。6:4の比率は01年以降、ずっと変わっていない(最も女性の比率が上がったのが04年の42.3%)。

 クラブ別で見てみると、最も男性率が高いのは、1位湘南(75.8%)、2位大宮(72.4%)、3位岐阜(72.3%)。逆に女性率が高いのは、1位大分(50.0%)、2位川崎(47.1%)、3位長崎(46.3%)となっている。なお前年と比べると、最も男性率が上がったのがG大阪で13.2%増。最も女性率が上がったのが山形で7.9%増。いわゆる「セレ女」で話題となったC大阪は4.9%増にとどまっており、女性率が極端に上昇したわけではないことが分かる。

 続いて、平均年齢について。13年は39.5歳で、前年の39.0歳から0.5歳上がった。平均年齢は04年の34.7歳以降、4.8歳(平均すると毎年0.54歳ずつ)も上がっているため「ファンの高齢化」がかねてより懸念されているが、仲澤氏は「一概にネガティブにとらえることはない」としている。その理由として氏が挙げたのが、イングランド・プレミアリーグの平均年齢が41.0歳(11年)であり、英国国民全体の平均年齢とほぼ変わらないこと(日本国民の平均年齢は45.8歳)。また、特に地方都市においては、リピーターとなる観客の年齢はどうしても高くなりがちであり、「丁寧に(集客活動を)やっているクラブほど、平均年齢が上がっていくのはやむを得ない」(仲澤氏)としている。

 ちなみに50歳以上の観客の比率が高いクラブは、1位札幌(43.0%)、2位新潟(40.9%)、3位北九州(32.0%)。ともない観客の平均年齢が高いクラブは、1位札幌(45.8歳)、2位新潟(45.6歳)、3位北九州(43.5歳)。逆に平均年齢が低いクラブは、1位鳥取(35.8歳)、2位鳥栖(35.9歳)、3位G大阪(37.1歳)となっている。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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