レバークーゼンで愛されるソン・フンミン 香川に続く新たなアジア人スーパースター

戦術面で課題を残すもファンからは愛される

ファンのお気に入りとなっているソン・フンミン。日本人に加え、韓国人選手たちもドイツでなじみ深い存在となった 【Getty Images】

 新たにやって来た若きヒーローは、レバークーゼンの戦術システムが、ハンブルガーのものよりもずっと複雑であることを率直に認める。そうなる理由の大部分は、彼の守備面での仕事がより増えたからだ。これはレバークーゼンの試合において基本となる部分で、時には彼の傑出した攻撃面でのクオリティーにマイナスに働くこともあるかもしれない。

 実際にそれが問題になってしまうことも、しばしばある。カウンターアタックの際に、適切なタイミングで、攻撃に参加するという正しい判断を下すことができていない。レバークーゼンのチーム内得点王であるシュテファン・キースリンクはそうした現状と、逸してきた得点チャンスの数に苛立ちを募らせている。ソン・フンミンとレバークーゼンをシーズン通じて追って取材している、とあるジャーナリストは、「攻撃の波の最終到達点として、ソン・フンミンがボールを受けられる形がベストだろう」と話す。ゴール前での彼は、確かな武器になるというのだ。

 同じことは韓国代表でも言えるようだ。まだ21歳にもかかわらず、ソン・フンミンはすでに23ものキャップを刻んでいる。14年のブラジルワールドカップでは、さらにキャップを増やすことだろう。母国では代表チームの英雄にしてポップスターであり、ポルトガルでのクリスティアーノ・ロナウドのように、見つからずに道を歩くことなどできない。「彼(C・ロナウド)はただただすごくて、僕のお手本です」とは、ソン・フンミンの言葉だ。

 時には目深に帽子をかぶり、マフラーで顔を隠すこともある。だが、写真撮影のリクエストを断ることは不可能で、レバークーゼンの背番号7の周囲には人だかりができるのがいつもの光景だ。

韓国人選手はドイツでなじみ深い存在へ

 母国でのプレッシャーは、ブンデスリーガのそれよりもはるかに大きい。毎日多くのインタビューのリクエストがあるのだと、クラブは説明する。レバークーゼンはできるだけメディア対応によるストレスを減らそうとしている。だからこそ、13年の韓国年間最優秀選手は自身に言い聞かせる。代表チームとは「非常に精神的に強いチームであって、成功に飢えた良い心構えが必要な場所」なのだと。

 この言葉は、彼本人にもぴったりであると考えられ、ヒーピア監督はそのプロフェッショナルな姿勢を称賛する。チーム内ではジョークを飛ばして、レバークーゼンファンのお気に入りとなっている。香川真司に続く者として、ソン・フンミンはブンデスリーガの新たなアジア人スーパースターとなり、その才能によりドルトムントでの香川の足跡を踏襲することになるかもしれない。

 ドイツの他クラブが、韓国という市場に目を向ける理由は十分にある。1日に行われた第19節、マインツはク・ジャチョルのスーパーゴールと、同胞のパク・チュホの得点でフライブルク相手に2−0の勝利を収めた。来夏からドルトムントでプレーすることが決まっているチ・ドンウォンは、第18節(1月25日)でアウクスブルクの一員として、ドルトムントと対戦。“新天地”に対して2−2の引き分けに持ち込む同点ゴールを決めている。

 レバークーゼンには、ソン・フンミンよりも若い20歳のユ・ソンウも所属している。ブンデスリーガでは日本人に加え、韓国人選手も監督たちにとってなじみ深い存在となった。ソン・フンミンの移籍でLGの名前がユニホームに入るようになってからは、なおさらのことである。

 レバークーゼンでは、「今とても幸せです」とソン・フンミンは語る。一方で視線は残留を争うハンブルガーにも注がれているが、「僕抜きでもやれるはずです!」と断言する。その言葉が現実となった時、2倍の笑顔が広がることだろう。

<了>

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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