穴を掘って夢を掘る…全国穴掘り大会潜入

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穴掘り大会って、なんだ?

全国穴掘り大会が今年も盛大に開催、で、いったいどんな大会なの? 【スポーツナビ】

 全国穴掘り大会――冗談のような話だけど、大の大人が真剣に穴を掘って、掘って、掘りまくって、穴の深さを競う。そんなバカバカしくも、れっきとした“スポーツ競技大会”があるという情報を入手した。いったいどのような大会なのだろう? 2月2日、さっそく取材に行ってきた。

 場所は千葉県成田市の成田ゆめ牧場。キャンプ場の広場を使って、毎年2月に開催されている。電車を乗り継ぎ、朝9時前に牧場に到着。すでに受付はスタートしており、終わったチームから穴を掘る区画の抽選(土質にも有利不利があるから実はこれが勝負を大きく左右する重大なことだったりする)、スコップなど使用道具が違反していないかのチェック(スポーツ競技ですから道具のルールがちゃんとあります)に移っていく。
 その後、開会式が終わり、各チームが割り当てられた区画に散っていくと、準備体操をしたり、図面でも見てるのだろうか、役割や細かい打ち合わせをしているチームもある。そうした人たちの服装を見ていると、配管、水道、電気、造園、土木関係と思われる会社の名前。あぁ、この人たちプロだ……。

 その真剣さと迫力に圧倒されてしまい、ちょっとその場を離れて辺りを見回してみると、あ、孫悟空がいる。べジータにフリーザ様もいるじゃないですか。あ、こっちにはグレイタイプの宇宙人に黄金バット、魔女の宅急便のキキもいて、あまちゃんっぽい子たちもいる……なんだ、コレ?
 実はこの穴掘り大会、ただ深く掘る人たちだけじゃなく、思い思いのコスプレを楽しんだり、地面を掘りながら芸術的な作品を作りに来る人もいるそうだ。

流れるような共同作業はF1のピットのよう

強いチームになると一人一人の役割が分担されており、その流れるような共同作業はまさにチームスポーツ 【スポーツナビ】

 へぇー、そんな楽しみ方もあるんだ。と思っているうちにいよいよ午前10時半、試合スタート。合図と同時に老若男女問わず目の前の地面を猛然と掘る、掘る、そして掘る! 圧倒的掘削! 本当に「アッ」と言う間に体半分がすっぽり隠れるくらいに掘ってしまうチームもあるくらいだ。第14回目を迎えた今年は過去最多の311チームがエントリーし、残念ながら当日は雨予報も出ていたため実際に参戦したチームは271チームにとどまったものの、1チーム最大6名までの参加が可能なので、1000名以上もの人たちが同時に穴を掘っていたことになる。それはひと言で言ってしまえば、非日常な光景です。

 ここまで説明し忘れてましたが、制限時間30分間のうちにどれだけ深く穴を掘れるかを競う穴掘り大会。この「30分間」というのが絶妙な時間だと思う。2001年の記念すべき第1回大会では制限時間は2時間だったが、これだと深く掘りすぎるチームが出てきてしまい、管理上危ないということで翌年からは1時間に。それでも4m以上掘るチームが現れ、やはり深さ4m以上の穴は危ないということで、2006年から現行のレギュレーションである制限時間30分に落ち着いた。

 30分というのは以外に短く、ただ闇雲に力勝負で掘ればいいわけではない。綿密な計画のもと掘り進めていかないと、深くは掘り進めないのだ。事実、昨年の優勝チーム「豊田市管工事組合青年部CI9」は、1人が“司令塔”となり、工程表のようなものを見ながら、ストップウォッチを片手にどのタイミングで穴を掘る選手を交代させて、どの選手を投入するかを指示。掘る人、バケツを送る人、はしごをかける人と、それぞれの役割を流れるように全うしている姿は、まるでF1のピットクルーのよう。穴掘りとはまさに“チームスポーツ”なんだと思った。

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