穴を掘って夢を掘る…全国穴掘り大会潜入

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そもそもなぜ穴掘り大会が生まれたか?

中にはこんなコスプレで穴を掘っている人たちも 【スポーツナビ】

 大人が完全に地中にもぐって、はしごがないと地上に出てこられないくらい深い穴が次々と現れ、また様々な“穴掘りアート”も出現する中、タイムアップの合図。ここから牧場スタッフがすべての穴の計測に入る。順位をつけて、各賞を選び、閉会式の準備も含めると3時間ぐらいかかるので、その間、穴掘リストたちはバーベキューに舌鼓を打ち、牧場の動物と戯れるのである。激闘の疲れを癒す時間だ。僕もソフトクリームを食べたり、ヤギ・羊・馬とかとひとしきり遊んでばかりではなく、この時間を利用して、同牧場の観光事業部課長・鈴木卓さんに話を聞いた。
「私どもの牧場は観光施設として運営しているのですが、やはり冬場は集客が落ち込みます。キャンプ場もまったく空きスペースとなってしまっているので、何かテコ入れできないかと考えていました。そこで、牧場にある自然を利用したインパクトのあるイベントということで、穴掘り大会を開催してみようとなったわけです」

 当初は手探りながら“とりあえず”始めた大会。しかし、穴を掘るという単純明快なルールがうけて、ジワジワと人気が拡大。第1回大会では66チームだった参加チームが、昨年は史上最多の297チームが参戦と4倍以上。今年で14年目を迎える牧場の看板イベントにまで成長した。
「穴掘りはシンプルですけど、奥が深い。限られた時間内でどれだけ深く穴を掘れるかの勝負ですので、決して力勝負だけじゃなく、緻密な計画も必要となってくるんです。その一方で、コスプレをしたり、ユーモアな穴を掘ってくれたりと、私どもがそういう方向へ仕掛けたわけでもないのに、お客さま自らが自分たちで楽しみ方を色々と作ってくれている。穴掘り大会はお客さまが育ててくれたイベントだと思いますね」

 もちろん、男性だけが有利にならないよう、女性だけのレディース部門、小学生以下のちびっこ部門も併設。また、コスプレ賞、面白い穴・芸術的な穴を作ったチームに贈られるユーモア賞、さらに10位ごとのキリのいい順位になったチームには「ピタリ賞」が贈られたりと、必ずしも勝負論ばかりではないところも、ジワジワ来ている穴掘り大会の魅力なのだろう。

穴を掘りに来たんじゃなくて、夢を掘りに来た

これが優勝チームの穴(3m41cm)、この地面にはたくさんの“夢”が詰まっているのかも 【スポーツナビ】

 というわけで、気になる今年の順位ですが、優勝は「豊田市管工事組合青年部CI9」で、見事に連覇を達成。記録は3m41cmで、2位とはわずか2cm差の死闘でした。
「優勝経験の差が出た結果ですかね。僕らも優勝するまで4年かかって、それまでに色々と作戦とか穴の掘り方を練り直してきたわけですから。それに僕らは本当にチームワークがいいので」と取材に答えてくれたチームの司令塔・宇佐美克幸さん。来年は3連覇を狙うこと、そして将来は外国からもチームが参戦して“穴掘り世界一”になりたいと語った。

 たかが穴掘り、されど穴掘り。鈴木課長が言っていたように、穴掘りはシンプルでいて奥が深い(穴だけに)。そういえば、魔女の宅急便・キキのコスプレをした美女がこんなことを言っていた。
「私、穴を掘りに来たんじゃなくて、夢を掘りに来たんです!」
 単なる冗談でそう言ってくれたのかもしれないけど、案外、参加した人たちはみんな、本当に夢を掘りに来たのかもしれないですね。よし、来年は僕もいっちょ夢を掘りにチーム・スポーツナビで参戦してみますか!

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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