チーム低迷も価値が増す内田篤人の存在=2月のレアル戦で再び世界最高峰の戦いへ
CLグループリーグで全戦フル出場を果たした内田
途中交代でピッチを離れる時だけ、ピッチに頭を下げるからだ。今シーズンのグループステージでの内田の戦いは、これまでとは異なるものだった。
今シーズン、シャルケでグループステージにフルタイム出場を果たしたのは内田とロマン・ノイシュテッダーの2人だけ。昨シーズンのリーグ戦で4位に終わったシャルケは、プレーオフをギリシャのPAOKテッサロニキと戦っている。この2試合を含めると、すべての試合で先発、フル出場を果たしたのは内田だけだ。
グループステージでの戦いでは、サイドバックとして第一に求められる守備でも安定感があった。
「1対1に関してはアクシデントでもない限りはやられない」
内田はそんなふうに話していたが、相手の縦への突破で置いていかれたシーンもバーゼルとのグループ最終戦の前半6分のシーンくらい。チームが惨敗したチェルシーとの試合でも、対峙するドイツ代表のアンドレ・シュールレにほとんど仕事をさせなかった。
地味なプレーをしっかりこなし、チームを陰から支える
ケビン=プリンス・ボアテングのサイドチェンジを受けた内田は素早く前方のジェフェルソン・ファルファンにパスを預けると、そのファルファンの外側を勢いよく駆け抜けていく。ファルファンのマークについていた相手DFは、そのスピードを見て内田にパスが出る可能性があると判断して一瞬だけ内田の方に身体を動かした。そのためにファルファンの前が少しだけ空いた。この隙を見逃さなかったペルー人MFはファーサイドに正確なクロスを送る。そこで待っていたユリアン・ドラクスラーがこれを受け、ゴール右隅に蹴り込んだのだった。
シーズン前に、内田は同様のシーンを想定してこんなことを言っていた。
「俺もどっちかというと(縦のコンビを組む選手に)文句は言わない方だから。ボールを持っている人間の判断だからね、別に出さなくてもいいんだけどね。そうやって上手く関係を築くのも選手の能力じゃないかな」
自らが直接ゴールをアシストしなくても、チームメートが持っている能力を陰で出させてあげるのもまた、一つのアシストであり、重要な仕事だと内田は考えていた。そして、それを実践してみせた。だから、バーゼル戦の先制ゴールについてはこう語っている。
「ファルファンくらいの選手だと(少しだけスペースを作ってあげるだけで)もう、十分だから。1メートル、2メートル敵が下がって、俺についてくれれば良いボールを上げてくれるというのは分かっているし。無駄走りっぽいけど、無駄走りじゃない」
こういう地味なプレーを常に続けて、気がつけばチームの中でプレーオフからただ一人、フルタイム出場を続けてきたのだ。