チーム低迷も価値が増す内田篤人の存在=2月のレアル戦で再び世界最高峰の戦いへ

ミムラユウスケ

中村俊の持っていた日本人CL通算出場記録も更新

日本人CL通算出場記録も更新。年齢を考えると50試合以上出できる可能性も 【Getty Images】

 内田にとって最初のCL(2010−11シーズン)では、初戦をけがのために欠場。昨シーズンの2度目のCLでは体調不良とけがで3試合を欠場している。特に昨シーズンはけがに悩まされ3度も戦列を離れたわけだが、その課題を今シーズンに入ってしっかりと克服したこともまた、評価されるべきものだろう(内田はCLバーゼル戦の負傷により、4日後のフライブルク戦を欠場したものの、12月21日のニュルンベルク戦では問題なくプレーできる見通し)。

 なお、第2戦のバーゼル戦ではそれまで中村俊輔(横浜F・マリノス)が持っていた日本人CL通算出場記録を更新。グループステージ最終戦でその数字を22試合にまで伸ばした。この数字はシャルケの中でも5番目に多い。25歳という年齢を考えれば、50試合を越えることも決して不可能ではない。

過去のシーズンと比較するとチームは低迷期にある

 しかし、チームとしての戦いに目を向けると必ずしも楽観はできない。内田にとって3回目となるCLでは、これまでで最も苦しみながら決勝トーナメント進出を決めたからだ。

 内田にとって最初のシーズンは初戦でリヨンに敗れたものの、そこからは安定した強さを見せて首位通過して、クラブ史上はじめてベスト4に進出した。決勝トーナメント1回戦で敗れた昨シーズンは、ホームゲームでは思うような成績を残せなかったとはいえ、グループステージ第3節のアーセナルとのアウェーゲームでは圧倒的な強さを見せて完勝するなど、シャルケには強さが感じられた。

 今シーズンはバーゼルに2勝、ステアウア・ブカレストに1勝1分だったものの、チェルシーにはホーム、アウェーともに0−3で敗れて完敗。力の差を見せつけられてしまった。

 ボアテングが加入し、ユース出身の新星マックス・マイヤーが台頭してきたとはいえ、チームとして昨シーズンよりも前進しているさまが見えづらいのも事実だ。加えて、チームとしての好不調の波も大きい。10番を背負うドラクスラーもこう話している。

「一歩前に進んでも、また元に戻ってしまう。これが繰り返されている。フラストレーションもたまるんだ。多くの代表選手を抱えているチームで、こんな事は起きてはいけないはず」

監督交代の苦境も。レアル戦が正念場になるか?

 先日のドイツカップ3回戦ではホームでホッフェンハイムに1−3と敗れ、リーグ戦でもCL出場権内から勝ち点差5をつけられている。

 そのためにホルスト・ヘルトGMも「(年内最後の試合となる)ニュルンベルク戦のあとに(今後のことを)考える」と語り、ドイツメディアは昨シーズンまでブレーメンの指揮を執っていたトーマス・シャーフ氏がイェンス・ケラー監督の後任となるのではないかと報じている。

 2年連続での決勝トーナメント進出を決めたとはいえ、必ずしも状況は芳しくないのだ。

 もっとも、その中で内田がやれることは必ずしも多くはない。むしろ、ここまで見せてきたようにけがなく、安定したプレーを続けて、チームの状態が上向くことを、チームが安定した成績を残せる時を待つだけだ。試合の中で攻撃陣が点をとってくれるまで、じっと耐えるディフェンダーのように。

 果たして、この苦境から脱することができるのか。CL決勝トーナメント1回戦、2月26日レアル・マドリーをホームに迎えてシャルケは再びこの世界最高峰の戦いを再開することになる。

<了>

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著者プロフィール

金子達仁氏のホームページで募集されていた、ドイツW杯の開幕前と大会期間中にヨーロッパをキャンピングカーで周る旅の運転手に応募し、合格。帰国後に金子氏・戸塚啓氏・木崎伸也氏が取り組んだ「敗因と」(光文社刊)の制作の手伝いのかたわら、2006年ライターとして活動をスタートした。そして2009年より再びドイツへ。Twitter ID:yusukeMimura

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