異能の怪物!アジアエクスプレス無敗V=名手ムーアも惚れた「本当に特別な馬」

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「ギアもたくさんあるし、能力もすごい」

アジアエクスプレスの一番の長所は競馬に向かう考え方だとムーアは語る 【写真:中原義史】

 ただ、芝でも通用する手応えを感じ取ってはいても、これが実戦となると全くの別物。過去、ダートで無敗街道を突き進んできた馬が初めての芝に替わって大敗する、というのは競馬の世界では珍しいことではない。しかし、アジアエクスプレスは違った。

「彼も実際には芝が苦手かもしれません。自分でも乗っていてダートの方が合っていると思う。でも、とても一生懸命走ってくれる馬ですし、競馬に向けての考え方がすごく前向きなんです」
 ムーアが相棒の特徴をこう語った。経験の浅い2歳馬にとって、馬場の条件がガラリと替わるのは大きな戸惑いとストレスを生むことだろう。しかし、どこまでも前へ――サラブレッドとして一番の資質とも言える“走ることへの気持ち”が、アジアエクスプレスは誰よりも強かったのだ。レース後、初GI挑戦で初勝利を決めたオーナーの馬場幸夫さんが「機関車のように走っているのをイメージして名づけました」という馬名の由来も、ムーアの言葉と合わせて、なるほどとうなずける。

「東京で初めて乗せてもらったときから、ギアもたくさんあるし、能力もすごい。とてもいい馬だと思ったけど、芝でもダートでも勝てるというのは本当に特別な馬です。こういうタイプの馬にはあまり乗ったことがないですね」
 ムーアがそう絶賛する怪物候補の来年以降のローテーションは、手塚調教師にとっても頭を悩ませるところだろう。
「そうですね。マイルは十分こなせることが分かりましたが、これより長い距離となると未知の世界。ただ、こちらが考えている以上に距離適性はあるのかもしれませんが、デビューからここまでの3戦は間隔を詰めて使ってきたので、まずはしっかり休ませて、充電してから考えたいと思います」

エルコンドルパサーと比較するには早すぎるが……

将来はエルコンドルパサーのように世界の舞台で先頭を走る日が来るか 【写真:中原義史】

 思い返せば、日本競馬史に燦然(さんぜん)と名を残すエルコンドルパサーも同じ外国産馬で、デビュー当初はダートを使われていた。もちろん、血統背景も全く違うし、即座にエルコンドルパサーと比較するには早急すぎるが、それでもアジアエクスプレスはどこまで走り続けるのだろうか。芝でダートで、名前通りアジアの超特急として世界を股にかける日が来ることを期待せずにはいられない。

 なお、オーナーの馬場幸夫氏が所有する2歳馬といえば、栗東にも現在2戦2勝で出世レースのエリカ賞を5馬身差で楽勝したバンドワゴンがいる。来春クラシック戦線は馬場氏の勝負服『桃、袖白一本輪、白鋸歯形』に大いに注目だろう。

<了>

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