岩隈、川崎、青木が探し求めるもの――メジャー流を身につけ、さらなる進化へ

中島大輔

川崎宗則は、どこに行こうが川崎宗則のまま

プレー以外の部分でも日米のファンを楽しませてくれた川崎。その前向きな姿が人気を集めた 【スポーツナビ】

 一方、メジャー1年目を送ったマリナーズから移籍し、トロント・ブルージェイズで2年目を過ごした川崎宗則は、「まだ適応できていない」と話す。そして、「日本でも適応できていなかった」と続けた。「そんなことはないと思う」と話を振ると、川崎は間髪入れずに語り出した。
「そう、そこなんです。他人から見ての感覚と、自分の感覚は違う。僕とすれば、なかなか日本でも適応できていなかった。そして、メジャーでもまだ適応できない自分がいる。だからこそ日々、トレーニングしているんです」

 12年、イチローを追いかけてマリナーズに加入したが、“師匠”と崇める左打者はシーズン途中にニューヨーク・ヤンキースへ移籍する。そして今季、川崎はトロント・ブルージェイズとマイナー契約を結び、自身の力でメジャーに這い上がった。
 ブルージェイズでは通訳のいない環境だったが、限られた語彙(ごい)の英語に大きなジェスチャーを交え、ユーモアたっぷりに堂々と話し、チームメートやファンに愛される人気者となった。

「アイム・ジャパニーーーーーーズ!」
 13年5月26日のボルチモア・オリオールズ戦で勝利の立役者となり、ヒーローインタビューで絶叫した姿に日米のファンは拍手喝采を送った。川崎が国境を越えて万人を魅了する理由は、とにかく前向きな姿にある。川崎宗則は、どこに行こうが川崎宗則のままなのだ。
「飛び込んだら、もう泳ぐしかないないですから。犬かきだろうがなんだろうか、泳ぎ方は人それぞれだけど、どうにか浮けばいいわけですよ。何でもいいから浮けばいいと思ったら、何とかなるものなんです。頭で考えるばかりでなく、とにかく行ってみないと始まらない。まずは足を使っていく。僕がやっているのはチャレンジなどという堅苦しいものではなく、自分のやりたいことをやっているだけです」

川崎が変えた打席での意識

まだ来季の所属チームが未定の川崎。しかし、川崎がやる野球はどこでも変わらない 【写真は共同】

 川崎がメジャー2年間で残した成績を比較すると、確かな変化が見られる。顕著なのが出塁率で、2割5分7厘から3割2分6厘にアップした。成績上昇をもたらしたのは、異国で過ごした時間によるところが大きい。
「移籍して最初はどんどんヒットを打とうとしたんですが、それだけでは結果が出なくて。青木選手やイチロー選手を見ていると、相手ピッチャーにたくさん球数を投げさせていることに気づきました。それが相手にとって嫌なことなんだなと分かって、そういうトレーニング・アクションをしていこう、と。メジャーで1年間やった経験が、2年目の自分をそうさせたんだと思います。今年は打ちにいきたい気持ちを我慢して、ある程度ピッチャーに球数を投げさせることを意識しました」

 川崎はブルージェイズで貴重な戦力となったものの、13年限りで自由契約となった。来季、どの国のどのチームでプレーするかは未定だが、川崎がやることは変わらない。
「もっと良い野球、うまい野球、面白い野球をやりたい。そのためには日本でプレーするかもしれないし、米国でやるかもしれない。どこでやろうが思い切って、楽しんで、プロ入り15年目、33歳の川崎宗則を皆さんに見せたいと思います」

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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