村田諒太がプロ2戦目で見せた収穫と課題=猛者が待つ世界の中量級で戦うために――

長谷川亮

世界で戦うための試金石だった一戦

プロ2戦目の村田はくせクセ者だったピーターソンを8回TKOで仕留めた 【t.SAKUMA】

 ロンドン五輪ボクシング金メダリスト・村田諒太が6日、プロ第2戦を8回1分20秒TKOで勝利した。しかし、初回からダウンを奪い2回TKOの圧勝で終えた初戦と異なり、長期戦を余儀なくされ、被弾して足が止まるなど、第1戦ではなかった難局を強いられた。村田の行く道、挑戦の困難さが改めて浮き彫りになった第2戦を村田の言葉とともに振り返る。

 国内トップ、東洋太平洋王者の柴田明雄を相手にしながら、一方的な内容で終わらせたデビュー戦。「さすが金メダリスト」という強さを見せた村田だが、はたして強者が揃い、層の厚さを誇る世界ミドル級においてその強さはどれほどのものなのか。プロで13勝(8KO)1敗、30勝4敗を記録した(本人談)アマまでさかのぼってもダウンがないというクセ者、デイブ・ピーターソンを相手に試金石の一戦となった。

距離を維持するためのジャブの重要性

序盤の村田はジャブが使えず相手との距離が維持できなかった 【t.SAKUMA】

 序盤、村田は柴田戦同様、顔の横にガードを立てて前に出る。ピーターソンのパンチをブロッキングで弾きながらプレッシャーを掛け、左右ボディ、顔へは右ストレート・右クロスを放ってヒット。2戦連続で早い回でのKO勝ちも期待された。しかし「当たってるつもりなんですけど、横に倒しながらもらうっていうか。当たっても抜けるような感じで、なかなかダメージを与えられなかった」と振り返る。ダウン経験がないと言えば打たれ強さやタフネスを想像するが、ピーターソンはそれだけでなくパンチを殺す技術を持ち合わせていた。「こういう風に外国人特有の柔らかさで逃げられると、一発狙いじゃダメなんだなと感じた」と村田は言い、今後へ向けジャブの重要性を再認識していた。

 ディフェンスがアマ時代と変わらずブロッキングによった点も、「ジャブが出るまで特にそうだったので、左がなかったっていうのはすごいダメだったと思います」と反省。たしかに前へ出るもジャブがないため相手との距離を維持できず、クリンチされてしまう場面も少なくなかった。ピーターソンのパンチはガードで弾きさえすれば「効くっていうほどのものはなかった」と村田は言うが、「ただこれがもっとハードなパンチになったらどうなるんだろうっていう感じはしました」とやはり反省。

村田に強く感じさせたスタイルチェンジの必要

一夜明け会見では「世界レベルではまだまだ。ジャブの重要性を再認識した」と課題を挙げた 【スポーツナビ】

 強者であればガードの上からでもパンチを効かせることがあるため、「アマチュアでグローブが厚くてヘッドギアがある中で、ガードして入っていって僕の力でショートで打てば試合に勝ってきた。でも、プロになって薄いグローブでヘッドギアがなく、そのスタイルだったら無理だと分かった。やっぱりチェンジしないといけない」と言う。被弾した場面を振り返って、「それこそあれがゴロフキン(※28戦全勝25KOのWBA世界ミドル級王者)のパンチだったら、とうにノックアウトされてると思います」とも話したように、上を見据えてさらなる成長、スタイルチェンジの必要を村田に感じさせる一戦だった。

 スタミナと最終回で倒し切る勝負強さという収穫、ジャブとディフェンス技術の不足という課題――その両方が見られた第2戦。金メダリストで世界チャンピオン、日本では誰も成し得ぬ夢へ向け周囲の期待は大きく、そして早い。だが、無名のピーターソンがパンチを受け流す妙技を持ち、最終回まで村田を手こずらせたように、ミドル級は怪物のような猛者が多く待つ世界。自身の課題を的確にとらえ、成長していく術に長ける村田だけに、周囲の早急な期待に駆られることなく、プロの世界でじっくり力を伸ばしていくのが得策だ。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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