寺川綾が現役“卒業”「本当に幸せな水泳生活だった」=一問一答全文

スポーツナビ

「私そのものが水泳でできている」

寺川は今後、水泳の普及にあたりたいと話すが、水泳以外の取り組みに関しては「想像ができない」と笑う 【スポーツナビ】

――“引退”ではなく“卒業”という言葉を使った理由は?

 いろいろ考えたのですが、“引退”という言葉が寂しくて、自分の口からなかなか言えないなと。競技からは卒業という形ですが、水泳は生涯スポーツですし、泳げなくなるわけではないので、あえてこの言葉を選びました。

――このタイミングを選んだのは?

 16年のリオデジャネイロ五輪に向けて、14年、15年と後輩たちに世界の舞台を経験して、良い結果を残してもらいたいなと思い、タイミング的に今が良いのではないかと思いました。

――競技生活を一言で表現すると?

 これで終わりだと決めたときは、すごく寂しくてどうしようもなかったのですが、今はすごくスッキリした気持ちです。本当に幸せな水泳生活を送ることができたと思います。

――競技生活を振り返って、どんな日々だった?

 毎日練習するのが当たり前だったので、“生活の一部”ではなく、私そのものが水泳でできている感じだと思います。

恩師・平井コーチからは労いの言葉も

――結果が出ない時期も注目されたが、あらためてどんな競技生活だったか?

 もちろん良いことばかりではなかったです。つらいことも、もう辞めようかなと思ったこともありました。でも、諦めるのはすごく簡単で、続けることがどれだけ大変かを考えたときに、諦めるのはまだ早いんじゃないかと思い続けて、ここまで来ました。山あり谷ありの水泳人生でしたが、その分、たくさんの方に応援していただきました。そういう方々に「もったいないよ」と言われて最後を迎えることができて、逆に良かったなと思います。

――“美女スイマー”という代名詞がついて回った。葛藤があったと思うが?

 突然、いろんな人に声をかけてもらったことで戸惑いましたし、初めて水泳を見に来てくださる方々に、どう接すればいいかも正直分かりませんでした。ただ、私を見たくて試合を見に来たと言ってくださる方も、すごくたくさんいました。最初はどうなっちゃうかなと思いましたが、最終的に水泳ファンが増えたと思うので、その点はすごく良かったと思いますし、感謝しています。

――恩師・平井コーチとはどんな話を?

 平井先生にはほとんど相談していなかったのですが、先生も薄々気づいていたようです。先生にごあいさつにうかがったときも「本当によく頑張ったよ」とおっしゃってくださいました。

――家族からかけてもらった言葉は?

 昨年辞めると思っていたので、まだ1年続けると言ったときに、すごくびっくりして「あぁ、良かった」と言っていました。これで終わりという話をしたときは「長い間よく頑張ったね。お疲れさま」とすごくあっさりした感じでした(笑)。

「ここからがスタート」

――来年はどのように過ごしたい?

 一番は水泳普及に貢献すること。また、20年の東京五輪が決まった後、水泳教室などで(参加した)ちびっこで「僕も、私も五輪に出たい」という子が増えたので、少しでもいろんな方に水泳を楽しく続けてもらって、五輪を目指す楽しみを与えられたらと思います。

――水泳以外でやりたいことは?

 選手だったときは、目標がすぐに思いついたり、「こうなりたい」という想像ができました。ただ、今は自分がどういう姿であるのか、まったくイメージできなくて。ここからがスタートだと思うので、自分にしかできないことを少しずつやりながら、探しながら頑張っていきたいです。

――競技生活で得たものは?

 人とのつながりだと思います。仲間もそうですし、いろんな国の選手とのつながりもそう。水泳をやっていなかったらここにもいないと思いますし、こんなにたくさんの人の前で座ることもなかったと思う。今まで支えてくださった方たちに感謝の気持ちを持って、これが終わりではなく、これからもいろんな方々とつながっていきたいと思います。

――若手が育っていないが、後輩に伝えたいことは?

 長い目で見て、「あと何回、五輪に出られるのか」「何歳まであと何年あるから頑張りたい」と思ってくれるとうれしいなと思います。背泳ぎの選手は、世界に行って必ずメダルを取って帰ってきていました。だから、自分もそういうふうになりたいと思いましたし、皆さんが築き上げてきたものを自分のところで崩したくないという思いもすごく強かった。16年五輪までまだ時間があるので、今、日本選手権の決勝で戦っている後輩の選手たちには、五輪の背泳ぎでメダルを取れるように、コツコツと頑張ってもらいたいと思います。

<了>

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