世界の潮流をつくるドイツサッカー=ブンデス頂上決戦から見たプレミアとの差

フランソワ・デュシャト

イングランドで求められるドイツ人

ドイツとイングランド。両国のサッカー文化の差異は代表の強化にはっきりと現れている 【Bongarts/Getty Images】

 そんなドイツのサッカーを愛するということを、2010年ワールドカップで敗れて以降、イングランドの人々は学んでいる。それはクラブチームも例外ではない。

 今季のCLに出場しているドイツの全4クラブは、それぞれプレミアリーグのクラブと同じグループに入って角を突き合わせている。ドルトムントとアーセナルは、互いに敵地で1試合ずつ勝利。レバークーゼンはオールド・トラフォードでの興味深い対戦を残しているものの、ホームでマンチェスター・ユナイテッドに敗れている。シャルケはチェルシーに2度退けられており、マンチェスター・シティを下したバイエルンだけが、唯一大陸側の代表としてイングランド勢に勝ち越している。

 確かに、クラブレベルではこうしたつばぜり合いを続けているのだが、多くの専門家はイングランドサッカーはドイツの例をみならって、リフォームに取り掛かるべきだと話している。ドイツのクラブは財政的な安定をもたらすコンセプトを有している。そして、継続的にプロチームへ新しいタレントを送り出し続けることでベテランとの競争をつくり出し、さらには手頃なチケットの価格がスタジアムの素晴らしい雰囲気を生み出している。

 そして新しいタレントの輩出に関する問題は、リーグのポジションにも反映されている。イングランドでは自分たちの子供よりも、傭兵軍団に投資する方を好むのである。現在のトレンドでは、ブンデスリーガのクラブの選手、あるいはドイツ代表選手を買い求めるイングランドのクラブが増えているのだ。

広がるサッカー文化の差

 イングランドで新しい世代のタレントが育っていないという問題は、特に代表の強化においてはっきりと示されている。19日にウェンブリー・スタジアムで行われた親善試合では、ドイツ代表がイングランド代表1−0で退けた。“たったの”1点差にすぎないが、両国のサッカー文化の差異は、どんどん大きくなっているというのが本当のところだ。今日のドイツのサッカーは、イングランドの10年先を行っている。この10年間、主要な国際タイトルを手にしてはいないが、ブンデスリーガのクラブは一本筋の通った道を進んでおり、その歩みが報われようとしている。世界の潮流をつくっているのは今やドイツサッカーであり、その財政面、タレント創出、インフラ整備といった点から、この流れは将来的にも続いていくものだ。

 そしてこのトレンドは、最終的には日本にも到達することだろう。今でもブンデスリーガのクラブは、極東の地から傑出したタレントを探し出そうとスカウティングを続けている。ブンデスリーガ以上に日本人選手がプレーしているヨーロッパのリーグはない。日本人選手はドイツに完璧にフィットするのだ。

 そう遠くないうちに日本のスーパースターたちは、世界のトップだからという理由で、イングランドを目指すということはなくなるだろう。香川がドルトムントへの帰還を考えていることも、無関係ではないはずだ。

<了>

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著者プロフィール

1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net

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