【週刊グランドスラム283】アジア・ウインター・ベースボールで腕を磨いた、もうひとつの“日本代表”

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12月1日の第1試合の審判団。左から花井弘樹、陳均瑋、范杞平、土屋恵太各審判員。 【写真=宮野敦子】

 台湾・台中市と斗六市で開催されたアジア・ウインター・ベースボール2024(AWB)では、社会人選抜の半数以上の選手が初めて海外でプレーしたが、そうした経験を積んだのは選手だけではない。国際審判員の資格を持つ審判員のうち、6名がAWBへ派遣された。国際審判員のライセンスを持つ審判員は、都市対抗と日本選手権を優先的に担当しているが、海外でジャッジする機会はそう多くはない。技術向上を図る取り組みのひとつとして、日本野球連盟から主催者側へ依頼して実現した初めての試みだ。
 23日間の開催期間中、約1週間ごとに2名ずつが派遣された。長野県野球連盟所属の花井弘樹さんは、2023年に中国で行なわれた第11回U-15アジア選手権の経験はあるものの、社会人の海外での試合は初めて担当する。
「日本での試合と一番違うのは、審判員同士のコミュニケーションの取り方ですね。英語でやり取りし、試合前後のミーティングは概ね問題ありませんが、細かいニュアンスを伝え合うのは難しい。野球はルールに則って行なうので、ジャッジ自体は変わりありません。初めて担当した試合は緊張しましたが、いつも通りにやること、基本に忠実にやることを心がけました。私は緊張しやすいので、どんな舞台でも冷静にジャッジできるよう『メンタル強化』を個人的なテーマにしています。海外での研修制度は、ステップアップにつながる大変有り難い機会です」
 試合中には台湾の審判員と言葉を交わし、時にはアイコンタクトをしながら「いつも通り」に試合を進める姿があった。一方、同じ時期に派遣された大阪府野球連盟所属の土屋恵太さんは、選手と見間違えるようなTシャツと短パン姿で試合前のウォーミング・アップに取り組んでいた。「身体と目を動かして試合に備える」のがルーティンだという。大学在学中から審判員を始め、「プロの審判員を目指していたので、将来を見据えて」22歳でアメリカの審判員養成学校に通った。多くの生徒がメジャー・リーグの審判員を目標に入学するが、技術向上を目的にする生徒もおり、日本からも毎年数名が入学している。約1か月間、座学と実技に励んだ土屋さんだが、「今回、AWBで実際にジャッジするのとは別物です」と話す。
「正確な判断をするためにも、審判員同士のコミュニケーションは重要です。日本語が通じない中でも、日本と同様にコミュニケーションを図り、誰が追うべき打球なのかなどを確認し合う。普段とは異なる、いい経験をさせてもらいました」

海外でも「いつも通り」に試合を進める姿

 北海道出身の土屋さんは中学時代、王子製紙苫小牧のOBに野球を教わったことがあるそうだ。子どもの頃から社会人野球に馴染みがあり、それが現在の審判員活動にもつながっている。「会社を背負って戦う社会人野球は、他のカテゴリーとはまた違った面白さ、真剣味がある」と言う。そして、花井さんはこう続ける。

12月4日のNPB WHITE対TAIWAN SEASでは、土屋審判員が球審を務めた。 【写真=宮野敦子】

「私たち審判員は、選手の息づかいや感情表現を近くで感じることができる。特別で幸せな仕事です。そんな中、自分の気持ちをコントロールして、いかに冷静にジャッジするかが重要です」
 2025年以降のAWB派遣は未定だが、こうした機会をより多く設け、選手だけでなく審判員も海外での経験を積むことで、社会人野球の発展につながるのではないだろうか。そうして、熱いプレーとともに冷静なジャッジで社会人野球をより盛り上げていってもらいたい。
【取材・文=古江美奈子】

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著者プロフィール

1949年に設立した社会人野球を統轄する(公財)日本野球連盟の公式アカウントです。全国の企業、クラブチームが所属し、中学硬式や女子野球の団体も加盟しています。1993年から刊行している社会人野球オフィシャル・ガイド『グランドスラム』の編集部と連携し、都市対抗野球大会をはじめ、社会人野球の魅力や様々な情報を、毎週金曜日に更新する『週刊グランドスラム』などでお届けします。

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