世界の潮流をつくるドイツサッカー=ブンデス頂上決戦から見たプレミアとの差

フランソワ・デュシャト

世界中で放映された「ドイツ版クラシコ」

CL決勝の再現となったドルトムントとバイエルンの頂上決戦は世界中で放映された 【Bongarts/Getty Images】

 彼は愛され、そのクラブで素晴らしいシーンをつくり出してきた。香川真司はドルトムントですべてを手にしたが、少なくともマンチェスター・ユナイテッドから移籍のオファーが届いた時から、日本ではイングランド・プレミアリーグがドイツ・ブンデスリーガよりも高いステータスを誇っているのだということを、ドイツのサッカーファンは知るようになった。こうした事実は、国際的な放映権の歴史を通じて知られてきたことではある。だが、ブンデスリーガはこの10年で何とかプレミアリーグに追いつき、さらには追い越したと言う者もいる。

 先週末、ブンデスリーガはその最高潮を寿ぎ、また世界中もその目撃者となった。200以上の国で、「ドイツ版クラシコ」とも言うべきボルシア・ドルトムントとバイエルン・ミュンヘンの直接対決が放映されたのだ。5月25日に行われたチャンピオンズリーグ(CL)決勝の再現をテレビで楽しめなかったのは、FIFA(国際サッカー連盟)の加盟国の中では北朝鮮とパキスタンだけだったようだ。

 ブンデスリーガの頂上決戦は、昨季3冠王者の3−0の勝利で幕を閉じた。専門家の一部は、試合前からこの結果を予想していた。ドルトムントはルカシュ・ピシュチェク、マッツ・フンメルス、ネベン・スボティッチ、マルセル・シュメルツァーという、ファーストチョイスのDF4人が、全員欠場していたからだ。

バイエルンのレベルの高さが際立つ

 試合前から負傷者を出したことによるドルトムント「Bチーム」の4バックは、さまざまなことが言われていた。最近ではまったく出番がなかったマヌエル・フリードリヒが、現在世界最強の相手との試合で先発を任されたのだ。だが土曜日の対戦で、ユルゲン・クロップ監督率いるチームにおいて、最終ラインだけがウィークポイントになることはなかった。問題となったのは、こちらは「Aチーム」をそろえていたはずの攻撃陣である。ペップ・グアルディオラ監督の交代策によってバイエルンが終盤に披露したようなパンチ力を、ドルトムント攻撃陣は示すことができなかったのだ。

 ドルトムントは今季のブンデスリーガ13節を終了した時点で、首位のバイエルンを2点ほど上回る32ゴールをあげ、リーグ最多得点を記録している。しかし、この数カ月間、改善が必要なポイントとされてきたのは、チャンスをものにする効率の悪さである。1つのゴールを生み出すにあたり、ドルトムントは非常の多くのチャンスを必要としているのだ。バイエルン戦では、特にマルコ・ロイスとヘンリク・ムヒタリアンのチャンスを逃す場面が目についた。

 しかし、この試合ではフランク・リベリやバスティアン・シュバインシュタイガー、フンメルスやイルカイ・ギュンドアンといった傑出したスター選手が不在だったにもかかわらず、英国ではブンデスリーガのトップマッチのレベルの高さについて盛んに論じられている。そして、それはマリオ・ゲッツェやチアゴ・アルカンタラが先発ではなく、ジョーカーとして起用されるという、バイエルンのレベルの高さを語ることにもつながっている。

 ゲッツェとチアゴ、この2人の交代選手は、グアルディオラの采配に、大きな意味をもたらした。アウエーのジグナルイドゥナ・パルク全体が敵に回る中、古巣相手に戦ったゲッツェは冷静さを失わず、素晴らしいシュートで先制点を決めた。チアゴは中盤からの見事なロングパスで、アリエン・ロッベンによるチーム2点目をアシストしている。

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著者プロフィール

1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net

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