ラモス氏「負けている試合は采配が原因」=元日本代表MFが語るザックJの問題点

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ザッケローニ監督の采配に疑問を投げかけるラモス氏。選手にも気持ちを見せてほしいと語る 【坂本清】

 元サッカー日本代表MFでビーチサッカー日本代表の元監督であるラモス瑠偉氏は、ザックジャパンの戦いぶりに憤っている。「1つひとつのプレーを必死でやっているのかどうか。もう少しこのメンバーはできるんじゃないかと思っています」。ラモス氏は選手たちの能力を高く評価している。本来の実力さえ発揮できれば、ワールドカップ(W杯)でベスト4に進出することさえ可能だと思っている。それだけに、10月の欧州遠征で連敗を喫するなどいまいち噛み合っていない現状を歯痒く思っているのだ。怒りの矛先は、アルベルト・ザッケローニ監督にも向いている。「何で負けているのに、早い時間でリスクを冒さないのか? それが分からない」と、ここ最近結果が出ていない指揮官の采配にも疑問符を付けた。11月16日に行われたオランダ戦では2−2と引き分けるなど互角の勝負を演じたが、まだまだ課題は多い。ラモス氏が日本代表の問題点を鋭く突いた。(取材日:11月6日)

もう少しこのメンバーはできる

――日本代表の最近の戦いぶりについて、ラモスさんは率直にどう感じていますか?

 1つひとつのプレーを必死でやっているのかどうか。もう少しこのメンバーはできるんじゃないかと思っています。最近は監督の采配も、選手の間では「この場面でこの選手じゃないな、違う選手がほしいな」というギャップが出ている気がしますよね。10月のベラルーシ戦でハーフナー(・マイク)を残り3、4分で入れましたけど、何でもっと早く投入しないのか。しかもCKを獲得したのに、ショートコーナーを蹴っている。投入した目的を理解していたのか、監督を信用しているのかと思いますよね。選手はマイクを信用してないわけじゃないと思う。あの場面は本田が早くCKを蹴りたくて、人が足りないからショートコーナーを蹴ったんだと思いますけど、それを差し引いてもサイドからのクロスは1本もない。監督が何をしているのか分からない。私だけ知らないのかなと思うくらい不思議でたまらないですよ。

――そういう意味では采配に疑問を感じることは多いですか?

 たくさんあります。負けている試合は采配が原因だと思うことが多い。戦術も変えない。ベラルーシ戦も3−4−3にしたけど、長友(佑都)が怪我して元に戻した。そうじゃなくて何で2トップなどにしないのか? 何で負けているのに、早い時間でリスクを冒さないのか? それが分からない。リスクを冒してやられたらしょうがないんですよ。それなら見ている人も納得する。リスクを冒さずやられるのは腹が立ちます。勇敢に戦ってほしいのですよ。

――もっとメンバーも頻繁に入れ替えたほうがいいのでしょうか?

 替えたほうがいいですね。いろいろな選手を呼んでいるのに、チャンスを与えていない。(中村)憲剛が起用された試合ですごく良いプレーをしていたんですけど、次の試合はずっとベンチだった。これでは選手のモチベーションも下がりますよ。

――やり方自体もいろいろなオプションを持ってやった方がいい?

 やった方がいいです。こんなにメンバーがいるんですよ。アジアを突破したことに拍手は送りたいけど、全部苦しい試合をやっている。このメンバーがいるんだからアジアは楽に勝てなきゃダメ。勝ったのは良かったけど、すごいとは思わないです。彼らはもっとできる。あとは監督次第です。

侍としての姿勢は私たちのほうが持っていた

――選手たちに足りない部分はありますか?

 選手はそれぞれ一生懸命やっているし、本田(圭佑)のインタビューなんかを見ているとそう思います。でも1人ひとりにもっと気持ちを見せてほしい。あとは積極的に攻撃ですよ。何でボールを下げるの。経験があるんだから、ガンガン前に行けばいい。取られたらカウンターを食らわないように、ポジショニングをしっかり取れば怖くない。相手陣内でボールを取られたって構わない。そこをみんながもうちょっと積極的にやってほしいですね。セルビア戦とベラルーシ戦の2試合は、ほとんど本田のシュートがなかった。本田がもうちょっと打てるようにポジショニングを変えた方がいい。4−4−2にすればいいじゃないですか。縦に前田(遼一)と本田を並べてもいいし、柿谷(曜一朗)もやっぱり面白い。ただ柿谷が1トップをやろうとしているのが信じられない。代表では厳しいと思います。

――1トップに求められることはどういう資質でしょうか?

 抜群のキープ力にボディバランス。そう考えるとできるのは前田か本田しかいない。柿谷では厳しい。ただ柿谷と前田の2トップは面白い。これならいけると思います。

――もし選手たちが本来の実力を発揮したら、W杯でどのくらいの成績を残せると思いますか?

 ベスト4は間違いなく行く。勢いで決勝にだって行けるかもしれない。やり方次第です。それぞれの監督のやり方がある。答えは結果を出しているかどうか。前回大会の岡田(武史)監督がW杯2日前に本田の1トップを閃いたのはすごかった。あのままだったらボコボコにされると思っていました。あとはサイドの大久保(嘉人)と松井(大輔)。特に大久保がチームのためにやろうとしてたから、「ハマったな」と思いました。あれは岡田監督の采配がすごい。驚きましたね。阿部(勇樹)もアンカーにした。あれは阿部じゃないと無理です。

――ラモスさんならどのようなスタイルのサッカーをしたい?

 昔のヴェルディ川崎(現東京V)みたいなパスサッカーがやりたいですね。パスサッカーと言えばバルセロナの話がよく出るけど、私たちはそれを読売クラブの時からやっていた。ただ選手の技術が違うだけで、やっていることは一緒。あまりボールを後ろに下げないようにしたい。日本の選手はすぐ後ろに下げる。逃げないでほしい。前を向いたら前に縦パスを入れて、前田をうまく使って本田へ。そこで本田のミドルシュートですよ。簡単に相手にボールを渡さないようにまずはキープする。たくさんボールを持つと勝てるわけではないですけど、すぐに三角形を作るとかそんな簡単にボールを失わないような、そういうサッカーがやりたい。このメンバーなら頭が良いからできると思います。

――こういうサッカーを代表でやるとしたら、どういった点が足りないと思いますか?

 トレーニングですよ。選手たちは力がある。やる気になるかどうかです。ただ、監督はあまりやらせているとは思わない。監督の意図を理解できているかどうか。いまの代表は2チームか3チームくらい作れるだけの層がある。我々の時代は、ぎりぎり1チーム作れるか作れないかという感じだった。カズ(三浦知良)がけがしちゃったらどうするのか。ラモスが壊れたらどうするのとか。結局、W杯予選で都並(敏史)が壊れたとき、すぐ代わりは見つけられなかった。いまの代表は、サブのメンバーを見てもすごいと思います。ただ戦うプライド、侍としての姿勢は私たちのほうが持っていましたよね。

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