大山加奈が見た、グラチャンの序盤戦=新戦術の手ごたえと課題を語る

構成:田中夕子

新戦術が効果的だったロシア戦。アタッカーの5人は満遍なくポイントが取れた 【坂本清】

 12日に開幕した女子のワールドグランドチャンピオンズカップ2013(グラチャン)。バレーボール全日本女子『火の鳥NIPPON』は初戦のロシア戦に勝利(3−1)するも、2戦目の米国には敗れ(1−3)、ここまで1勝1敗で4位につけている。15日からは会場を東京体育館に移動し、アジア王者のタイ(15日)、ワイルドカードで出場のドミニカ共和国(16日)、ロンドン五輪金メダルのブラジル(17日)と対戦する。

 今回スポーツナビでは、東京ラウンドに向けて元日本代表の大山加奈さんにお話をうかがい、全日本女子の序盤戦の戦いを分析してもらい、今後の見どころ、注目選手などを語ってもらった。

新しい戦術が効果的だったロシア戦

 今大会、日本は新しい戦術を披露しました。従来はミドルブロッカーが入る場所に、迫田さおり選手や長岡望悠選手といった、得点力の高いウィングスパイカーが入る新戦術です。

 まだ2戦を終えただけですが、初戦(ロシア戦)は5人のアタッカーが、満遍なくポイントが取れていました。これまではレフトからの攻撃に偏りがちでしたが、迫田選手が入って、攻撃のパターンが1枚増えたことは大きな武器になりました。もともとバックアタックを得意とする迫田選手ですが、ただ単に跳躍力があるということではなく、相手のブロックが完成する前に打てているので、高いブロックの相手に対しても効果的に得点を取ることができています。

 セッターがトスをする前にアタッカーが助走し、セッターはアタッカーの助走に合わせてトスを上げる。これを「ファーストテンポ」と言うのですが、迫田選手はまさにその「ファーストテンポ」でバックアタックを打っていました。今、世界のブロックは、セッターのトスを見てから反応する、「リードブロック」がほとんどです。迫田選手のバックアタックに対しても、トスが上がってから相手は対応しようとしていましたが、トスが上がった時にはもうスパイクを打っているので、ブロックの間を抜けたり、当たっても弾き飛ばすことができる。それが、ロシア戦で相手のサーブをレシーブしてからの攻撃時、迫田選手のバックアタックが効果的に決まっていた理由です。

 正直なところ、始まるまではブロックの部分で厳しいかな、もっと相手の好き勝手に打たれてしまうかな、と思っていたのですが、ロシア戦ではワンタッチを取ったり、ブロックポイントを上げるなど、迫田選手のブロックがとても良かったのもチームにとっては収穫です。もともとウィングスパイカーの中ではブロックが上手な選手なので、ポジションが変わってもサイドへの移動が速く、きちんと役割を果たしていました。まだ2試合ですが、新たなポジションに入っての活躍ぶりは十分合格点を与えられるものでした。

勢いをもたらした石井と中道

 コート中央からのバックアタックをブロッカーが警戒すると、当然サイドへのマークは手薄になります。そこで木村沙織選手、新鍋理沙選手に加えてとてもいい活躍をしていたのが石井優希選手でした。

 まだ代表経験は浅いですが、今は絶好調で、とにかくすごい。難しいトスや、ハイセットをしっかり打ちきって、ブロックに当てたり、コースを抜くなど確実に得点していました。何より、勢いある助走からのスパイクはチームにも勢いを生み出します。ユキ(石井)の活躍が、チームにとって勢いを与えていたのは間違いありません。

 その石井選手を上手に生かしていたのがセッターの中道瞳選手です。米国戦はコンビが合わない場面もありましたが、ロシアのブロックに対して、あれだけ効果的に点数を重ねられたのは、中道選手のトスがきちっとアンテナまで伸びていたからです。途中でちょっと低く、短くなったところもありましたが、前半は高さを保ってアンテナまでトスが伸びていたので、スパイカーが気持ちよくスパイクを打てていました。石井選手も、中道選手のトスで勢いに乗りましたね。

 ロシア戦はサーブも良かったです。前後に揺さぶったり、見ている方向と全く違う方向へ打ったりと、木村選手と中道選手のうまく打ち分けるサーブがとても効果的でした。迫田選手や、長岡選手がミドルの位置に入る新戦術はサーブがカギになります。常にいいサーブを打ち続けられたことも勝因の1つですね。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。日本大学短期大学部生活文化学科卒業。なぜか栄養士免許を有する。神奈川新聞社でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部に勤務。2004年からフリーとしての活動を開始。高校時代に部活に所属したバレーボールを主に、レスリング、バスケットボール、高校野球なども取材。

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