大山加奈が見た、グラチャンの序盤戦=新戦術の手ごたえと課題を語る

構成:田中夕子

米国戦で見えた新戦術の課題

新戦術の課題が見えた米国戦。東京ラウンドに向けて、課題はみんなの攻撃テンポを合わせること 【坂本清】

 負けてしまった米国戦は、新戦術の課題も見えた試合でした。

 米国は「バンチリードブロック」という、3人のブロッカーが真ん中に寄り、束になって行うブロックが特徴で、システムがしっかり形成されたチームです。セッターからすれば、やはり3人がそろっている真ん中から攻撃を仕掛けるのは怖いと思うのですが、特に前半「真ん中から攻撃するのが嫌だ」という空気が強く出てしまっていました。

 米国とは練習試合で対戦しており、お互いのパターンをよく知っていたこともあったのか、最初から迫田選手のバックアタックを3枚ブロックで警戒していました。ロシア戦のようにはなかなか決まらず、結局真ん中が使えないため、攻撃がサイド、サイドになってしまいました。これでは新しい戦術をする意味がありません。途中から、米国のブロックも中央に集まる「バンチリード」ではなく、最初から「サイドが多い」と読んで、サイド側に2枚寄っていました。

 ただし、3セット目に長岡選手と岩坂名奈選手が入ったことで攻撃のパターンが変わり、1セット取り返すことにもつながりました。特に岩坂選手は、これまでよりも助走距離を長めに取っていて、ミドルブロッカーとして「このままじゃいけない」という意識が強く感じられました。

 途中交代で出場した選手たちが活躍するのは、チームにとって一番うれしいこと。長岡選手、岩坂選手だけでなく、近江あかり選手や、ワンポイントで入った平井香菜子選手もいい働きをしていましたね。

課題はみんなの攻撃テンポを合わせること

 残りは3戦。チームとしては表彰台や勝ちにこだわることを前面に打ち出していますが、結果だけでなく、新しいことをしているので、これからに期待感が持てるようなバレーをしてほしいですね。

 攻撃面に関しては、みんなの攻撃テンポを合わせること。迫田選手のバックアタックとサイドからの攻撃を同じテンポで行えば、相手のブロックもかく乱されるはずです。今はラリー中、ブロックの後に迫田選手がセンターへ開こうとしてレシーバーとぶつかったり、混乱している場面もあるので、センターだけでなくライトからのアタックをより多く取り入れるのも効果があるのではないでしょうか。

 大竹里歩選手のCクイックを見せて、レフト側のバックアタックを使ったり、Bクイックを見せて、ライト側のバックアタックを使うなど、いろいろなオプションがあるし、まだまだいろいろなことができる可能性を秘めています。

 ワクワクするようなバレーが見られることを、私も期待しています。

<了>

大山加奈

 1984年6月19日生、東京都江戸川区出身。小学校2年の時に地元のクラブでバレーボールを始め、小中高で全国制覇。特に成徳学園高3年時には春高バレー、インターハイ、国体の3冠を達成した。
 その年に初めて全日本に選出されると、同じく高校生でメンバーに選出されていた栗原恵(現:岡山シーガルズ)とともに「メグカナ」コンビとして人気を博す。高校卒業後は東レに入社。ワールドカップ、アテネ五輪に出場する。2007年ごろから椎間板ヘルニアなどのケガに苦しみ、10年に26歳で現役を引退。日本バレーボールリーグ機構への出向を経て、現在は東レに広報担当として勤務するほか、バレーの指導、普及活動にも携わっている。

2/2ページ

著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。日本大学短期大学部生活文化学科卒業。なぜか栄養士免許を有する。神奈川新聞社でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部に勤務。2004年からフリーとしての活動を開始。高校時代に部活に所属したバレーボールを主に、レスリング、バスケットボール、高校野球なども取材。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント