これぞ高橋大輔、圧巻演技もまだ伸びしろ 別人の変化でSP首位=NHK杯男子
高橋大輔、圧巻の演技でNHK杯首位発進 【坂本清】
スポーツナビでは、4回転ジャンパーとして全日本選手権、GPシリーズなどに出場した中庭健介さんに、日本男子3選手のショートプログラムを解説してもらった。高橋は、4位に終わったスケートアメリカと何が違ったのか。織田の得点が伸びなかった理由、無良復調のワケとは――。
高橋大輔、前回GPとは別人のような滑り
圧巻の演技でした。スケートアメリカ(GP初戦、10月19〜21日)との比較になりますが、18点も点数を増やしています。スケートアメリカではジャンプの乱れがあり、全体的にうまくこなせていない印象でした。でも今回は別人のようでした。こんなに難しいジャンプを簡単に見せてしまうのかと思いましたね。フィギュアスケートの世界では、ジャンプのほめ言葉として「4回転が3回転に見える」と言うのですが、まさにそういうジャンプでした。
彼は今季に向けて、スケートの基本であるコンパルソリー(基本の滑り、規定の図形を描いて滑る)をいちからやり直したそうなんです。その分、スケートがすごくなめらかになったのは良かったのですが、滑らかすぎてしまって、スケートアメリカではそれが自分のジャンプと合っていなかった感じがしました。ジャンプに向けての滑りは、滑りすぎてもダメなんです。滑りをなめらかにしようとし過ぎると、(跳び上がりの)力を入れるところで滑ってしまう。今回は新しく身に付いたなめらかな滑りにジャンプの踏み切りのタイミングが合っていたので、ジャンプの回転にキレがあって、ランディングの瞬間がなめらかで、トリプルのように見えたくらいです。今回はそのタイミングを磨き直して、ピッタリ合っていました。これはもう、この点数に「納得」という感じですね。
ステップシークエンスも出来栄えでジャッジ9人中8人が3点。こんなに3点がそろうのは見たことがないです。
スピンには取りこぼしがありました。レベル2や3になっている部分があって、回転が足りなかったのかも知れません。逆に言うと、こんなに良かったのに、まだ伸びしろまでも残しているんですね。
柔らかくて、ジャンプは力強く。物悲しい音楽のなかに希望が見受けられるような表現で、ジャンプ、ステップも格段に良いプログラムでした。これでスピンが決まれば“鬼に金棒”ですね。
それから、演技が終わった瞬間の表情にも驚きました。あんなに演技が良かったのに、まだまだと言うか、引き締まった表情でした。普通はホッとしてしまうと思います。ショートが良いとフリーで安心して崩れてしまう選手もいるのですが、そこはさすが大ちゃんだと思いました。