体操・コナミが見せた団体戦の勝ち方=世界を勝ち取る前提は“全員ノーミス”

矢内由美子

1人で複数種目をこなすことが必要

ゆかと跳馬で世界トップレベルの実力を持つ白井(写真)だが、団体戦を考えると3つ目の種目がほしいところだ 【Getty Images】

 全日本団体におけるコナミの選手のそれぞれの出場種目数を見てみると、最も多いのは内村で、つり輪を除く5種目に出場した。小林、山室光史、田中佑典が3種目。沖口誠、植松鉱治が2種目。内村は、ロンドン五輪では団体でも6種目すべてをこなして負担が大きかったが、コナミでは1種目分少ないことが余裕にもつながった。実際、内村は5種目中3種目でトップのスコアを出している。

 以下、
 2位の日本体育大は4種目の選手が2人、3種目が2人、2種目が2人。
 3位の順天堂大は加藤凌平が6種目、4種目が1人、3種目が2人、1種目が2人。
 4位の徳洲会は5種目1人、4種目1人、3種目2人、2種目1人、1種目1人。

 これらの結果を俯瞰(ふかん)して見ると、順天堂大は6種目を受け持った加藤の負担が大きく、それが跳馬の失敗を招く遠因になった可能性がある。事実、日本体育大にも敗れて3位に終わったのは、跳馬のミスが響いたからだった。

 また、今回の結果がすべてを物語っているわけではないが、1種目しかできない選手がいると、団体としてはどうしても苦しい戦いになる。ロンドン五輪の山室のように、試合中の負傷で選手を欠いてしまうケースも想定しなければいけない。スペシャリストであろうと、2つ以上はこなせるレベルになることが望まれる。
 ロンドン五輪では、山室が跳馬で負傷した後の4種目は、実質4−3−3でこなした。それでも銀メダルに踏みとどまったのは、日本が長年をかけてオールラウンダー重視の選手強化を進めてきたからだったと言える。

 6−3−3で戦う世界選手権でもそうだが、五輪では5−3−3になる。6人での戦い以上に、1人で複数の種目をこなす必要性は高まる。すでに、ゆかと跳馬で世界トップレベルの実力を示している白井には3つ目の種目を、そして、あん馬の亀山も、最低でも世界レベルの2種目目を身につける必要があるだろう。

チームワークを築ける代表スケジュールを

 そして、日本ならではのベースになるのが、“チームワーク”だ。
 内村は「コナミは、メンバーの半分以上が世界選手権や東アジア大会の代表。試合が終わってからあまり日数がなかったので、最初は不安な部分があったが、やってみるとチームワークが抜群だった。チームワークで乗り切った、本当のチーム戦だった」と胸を張った。

 ただ、内村は「本当のチームワークというのは、1カ月あまりの合宿で作るのは難しい」とも口にしている。来年10月、中国で開催される世界選手権では団体戦が行われる。16年のリオデジャネイロ五輪での金メダル奪回に向け、ナショナルチームの活動スケジュール見直しを視野に入れた議論も、今後出てくるかもしれない。

<了>

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著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

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