「逆転の駒澤」からの脱却でつかんだV3=元駒澤大・神屋氏が全日本大学駅伝を解説

構成:スポーツナビ

3位以下の力は互角 ミス1つが命取りに

箱根駅伝は出雲、全日本と連勝した駒澤大が優勢か。写真は4区でトップに立つ駒澤大・村山 【写真は共同】

――今回は明治大が3位に入りましたが、3位以下は混戦模様となりました。

 明治大も戦力は持っているんですよね。ただ、浮き沈みがあるので、3強に入るかはいらないかを行き来していたのだと思います。日本体育大も、主力の本田匠選手が欠けていたり、アンカーの矢野圭吾選手も調子が悪くて、ちぐはぐな感じがありました。

 日本体育大と合わせて3強と言われますが、実際は駒澤大と東洋大が抜けていて、そこにミスがあると、日本体育大も含めた次のチームが勝負できるのだと思います。3番とそれ以下の差は、選手が一人欠けたりミスが出るとすぐに入れ替わる程度のものです。学生長距離界のトップ選手が駒澤大は3人います。東洋大も、設楽兄弟に服部勇馬が加わってきました。ただ、他大を見ると戦力が少し足りません。今回のレースも、「東洋大と駒澤大はとりあえず置いておいて、自分たちのレースをする」といったオーダー配置に見えました。

――今大会では上位13校すべてが関東の大学でした。関東以外の大学が上位に食い込むのが難しくなっています。

 私自身も関西出身なので強く思うのですが、箱根駅伝や全日本で活躍している選手を見ると、関東以外の大学に行くという選択肢が減ってしまいます。この15年の間に、憧れが強さを生んで、強さが憧れを生むというループが加速していますよね。これでは、関東以外の大学で本気で競技に取り組むのは難しいのかなと。

――そのループを断ち切るのは難しいのでしょうか?

 今回、駒澤大の同期である揖斐祐治が監督を務める岐阜経済大が参加して、一石を投じる形になりました。そういう長距離の強化に乗り出す大学が関東以外でもっと増えてこないと難しいですね。選手は場数を踏んでもっと強くなっていかないといけないですが、箱根駅伝という鍛えられる大会が1つ少ないだけでも、選手にとっては厳しいと思います。
 関東以外にも良い選手はいると思うのですが、例えば関西の選手は関西に残るとか何かないと、全日本では戦えないのかなと。私は関西の人間なので、ぜひ全日本で立命館大や関西学院大など、関西の有名どころが上位にきてシードを取ってほしいなと思います。

勢いのある駒澤大に3冠のチャンス

――箱根駅伝ではまた違った展開になるのでしょうか?

 箱根に関してはやはり中村選手の配置がどうなるのかが気になります。1区・中村、2区・村山であれば、おそらくリードはできますが、長い戦いなので、2区・中村、9区・窪田にして、村山選手をどこに投入するかを考えることもあり得ます。対して、東洋大は、前回大会のオーダーを見る限り、先行逃げ切り形を取り、先頭を楽に走ることで力を発揮できると思っている節があります。今回の全日本もそれを狙ったのかもしれませんが、うまくいきませんでした。
 箱根駅伝では、駒澤大と東洋大ともにお互いを意識して、オーダーを作ってくるのではないかと思います。

――箱根には山という特殊区間(5区、6区)がありますが?

 駒澤大も東洋大もこれまで山を担ってきた選手が抜けて、ひとつの時代が終わった感じです。主力が上るのかそれ以外なのかは、全日本では測れない部分ではありますよね。ただ、どちらも戦力を持っているので、すごく上り下りが強くなくても、平地でカバーできると思います。その辺は指揮官の勝負になるのかなと。読み切れない部分はありますが、何らかの形で山をカバーする平地のオーダー配置にすることもできます。5、6区重視からは少し外れて、10区間全体のオーダーで勝負する形になるかもしれません。

――箱根駅伝では駒澤大と東洋大の2強になりそうですか?

 そうですね。印象として、駒澤大と東洋大が良い状態できているので、この2強だろうなと。他の大学は、前回大会の日本体育大のように、自分たちのレースをしてうまくいけば、チャンスをつかめるという目指し方をするのだと思います。

 駒澤大は過去にも3冠を逃していて、史上初の3冠に向けて鼻息も荒いと思います。東洋大も「駒澤大に負けたくない」という思いはあるでしょうが、出雲、全日本と勝っている駒澤大が優勢になってきたのではないでしょうか。駒澤大には3冠も見えてきていると思います。

<了>

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