代表躍進でブーム到来のベルギーサッカー=FIFAランク5位でW杯の優勝候補に!?

中田徹

2010年代に入り、人気、実力ともに向上

FIFAランクも5位まで上り、W杯の優勝候補と言っていいほど戦力は充実してきている 【Getty Images】

 しかし、2011年6月のユーロ予選、対トルコ戦のチケットが3日で完売した辺りからベルギー代表が求心力を取り戻し始めた。2010年10月に行われたオーストリアとの4−4の打ち合いに代表されるように、ベルギーの試合は派手さがあって面白かった。長らくベルギーはユース育成の遅れが目立ち、若い選手の海外流出が続いていたが、アンデルレヒト、スタンダール、ヘンクといったクラブが本格的に若手育成に乗り出したこともあって、オランダ、フランス、イングランド育ちの選手と、ベルギー育ちの選手がちょうど噛み合い始めたのだ。

 ベルギー人が「われわれの代表チームは間違いなく強い」と確信したのは、2012年8月のオランダとの親善試合だった。当時、ベルギーのFIFAランキングはまだ53位。一方、オランダのそれは 8位だった。いくらベルギー人の国に対する忠誠心が低いといっても、同じ小国の隣国としてライバル心は強い。そんな相手に4−2とベルギーが攻め勝ったのだから、彼らは盛り上がった。

ヤヌザイがいなくとも、ベルギー・ブームは続く!?

 今回のW杯予選でベルギーはクロアチア、セルビア、スコットランドと同じになる厳しいグループに入ったが、8勝2分けという文句なしの成績で首位突破を果たした。

 かつて三浦知良、中田英寿、小野伸二、稲本潤一といった面々がヨーロッパに渡った時、彼らの一挙手一投足が日本で話題を集めたように、今、ベルギーではビンセント・コンパニ(マンチェスター・シティ)、マルアン・フェライニ(マンチェスター・ユナイテッド)、ロメロ・ルカク、ケビン・ミララス(ともにエバートン)、クリスティアン・ベンテケ(アストン・ビラ)、ヤン・フェルトンゲン、ナセル・シャドリ、ムサ・デンベレ(それぞれトットナム)、トーマス・フェルマーレン(アーセナル)、エデン・アザール(チェルシー)、シモン・ミニョレ(リバプール)といったプレミアリーグ勢、その他、ティバウル・クルトワ、トビー・アルデルワイレルト(ともにアトレティコ・マドリー/スペイン)、ダニエル・ファン・ブイテン(バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)、セバスティアン・ポコニョーリ(ハノーファー/ドイツ)、アクセル・トマ・ウィッツェル(ゼニト/ロシア)、ドリース・メルテンス(ナポリ/イタリア)らの動向が毎週、詳しく報じられている。ビッグリーグで活躍するベルギー人のスター選手たちが、ベルギー代表チームを勝利に導く姿は、知らず知らずのうちに国民をひとつにしていった。

 オランダのサッカートーク番組では「ベルギー代表が強くなり、今やベルギーにはフラマンとワロンの対決は存在しないらしい」、「それはすごい。とても信じられない事だ」と驚きの声が上がった。それは本当なのだろうか。ウェールズ戦を目前に、楽しそうにビールを飲むサポーターたちに聞いてみた。
「フラマンとワロンの対立はまだある。私たちが生活している中で、両者のいがみ合いは決してなくなってない。しかし、ベルギー代表がW杯予選で勝ち続けていくうちに、その対立が和らいで行ったのは確か」。
「フラマン人たちはフラマン人だし、われわれはワロン人。それでもW杯はみんなをひとつにする。お互い一緒になってベルギー代表を応援する事に何の問題もない」。

 今や彼らのFIFAランキングは5位にまで上がった。「W杯では優勝できるかも」、「ベスト4が精一杯だろう」、「いやいや、そこまで行くにはビッグイベントの経験不足だよ」とサポーターたちは語り合う。

 今のベルギーにはウェールズ戦でデビューした17歳のザカリア・バッカリ(PSV/オランダ)に続き、ヤニック・フェレイラ・カラスコ(モナコ/フランス)、アンデルレヒトのデニス・プラート、ユーリ・ティーレマンス、スタンダールのミヒー・バチュアイなど、国内外で育つ次の代表候補が台頭し始めている。もしマンチェスター・ユナイテッドのアドナン・ヤヌザイがベルギー代表を選ばなくても、今のベルギーはタレントに事欠かない。このベルギーブームはしばらく続きそうな雰囲気だ。

<了>

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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