うなれ黄金の豪脚! オルフェーヴル悲願の世界一へ待ったなし

JRA-VAN

ブックメーカーの単勝1番人気

フォワ賞で示した強さにC.スミヨン騎手も太鼓判。「競馬だから絶対とは言えないが、今年は夢を叶えたい」と語り、悲願達成へ自信を示している 【photo by Tomoya "J" Moriuchi】

 現在、英国の大手ブックメーカーでも単勝1番人気に推され、名実共に2013年の凱旋門賞馬の座に最も近い存在とされているのが日本の誇る最強馬・オルフェーヴル。彼のキャリアを遡るのも今さらという気もするが、3冠+有馬記念、宝塚記念の両グランプリを制している5冠馬だ。

 ご存じのように昨年は凱旋門賞にも挑戦。初の海外輸送、初の海外滞在、初のロンシャンコースなどなど未知の要素が多く、走ってみなければ適性などが分からないという状況下で前哨戦のフォワ賞を優勝。それも予想以上の強さを見せつけたことから、オルフェーヴルの注目度はウナギ昇り。それまで彼に注目していたのは日本人メディアと数人の現地メディアくらいだったが、取材陣の数も日を追うごとに増えて世界規模の注目を集めるようになった。

 さらに、フランス国内ではヨーロッパの馬よりもオルフェーヴルの注目度が上がり、現地の新聞でも日々一面に取り上げられ、日本語フォントで「侍・オルフェーヴルが海を越えてやってきた」と書かれ、特集を組まれるほどの注目ぶり。それはフランス・ギャロの対応からも分かることで、我々報道陣はレース当日の開門前に召集され、オルフェーヴルが優勝した際の表彰式の流れなどを細かく説明される場面もあったほどだ。競馬場の入り口付近にはオルフェーヴル応援グッズとして非公式の「オルフェーヴル応援マフラータオル」なども発売され、これが飛ぶように売れていたのだから、オルフェーヴル・フィーバーはとにかく凄かった。既にレース前からオルフェーヴルが勝つと言わんばかりの騒ぎっぷりで、逆に日本人メディアや日本人の観客は引いてしまう一面も……。

昨年は最も興奮し、最も悔しい一戦に

 そんな中で大一番の凱旋門賞がスタート。オルフェーヴルは日本でもお馴染みとなっている後方待機策。日本からの僚馬・アヴェンティーノがレースを作る中、オルフェーヴルと鞍上のスミヨン騎手は虎視眈々と勝負所を見定めている様子だった。そして、最終コーナー手前辺りからスミヨン騎手が手綱をしごいて徐々に先行集団に並びかけていく。最後の直線に入ると、早々にスパートを開始するオルフェーヴル。「仕掛けるのが早いのでは?」と思わせるほど早めのラストスパートだったが、それでも後続を一気に突き放す豪脚はフランスでも健在。残り100mを切った地点では完全に先頭へ躍り出て多くの日本人が「悲願の凱旋門賞制覇達成の瞬間だ」と心を躍らせたほどだ。

 しかし、現実は甘くはなかった。オルフェーヴルの早めのスパートに気づいていたペリエ騎手鞍上のソレミアが馬場の内から強襲。見る見るうちに差が縮まっていった。この時にオルフェーヴルは内にもたれる癖まで出して、外から最内まで寄っていった。挙句の果てにはゴール寸前で手前まで変えてしまい(一説には軽くジャンプした)、僅差ながらもソレミアに先着を許す結果となった。この瞬間、ロンシャンに詰めかけた日本のファン、スタッフ、報道陣はもとより、現地フランスの人々からも大きな溜息が……。本当にあと少し手を伸ばせば夢が届くところからの、まさかの転落。筆者も20年近く海外競馬の取材を行っているが、最も興奮し、最も悔しい一戦だったと言える。

無事に本番を迎えてくれることを祈るのみ

前哨戦のフォワ賞を圧倒的な強さで勝利したオルフェーヴル。欧州ブックメーカーも1番人気の評価を与えている 【photo by Tomoya "J" Moriuchi】

 そんな苦汁をなめた日から1年の月日が流れ、再びオルフェーヴルは海を渡った。昨年の雪辱を果たすと共に、悲願と言える世界最高峰のタイトルを手にするために。

 今年は3月に行われた産経大阪杯を快勝し、宝塚記念へ向かう予定だったが、調教後に肺からの出血が見られたために回避。決して順調とは言えないローテーションの中、前哨戦のフォワ賞では折り合いに難色を見せたものの3馬身差で圧勝。追い切り前にパートナーに蹴られるなどのアクシデントもあったが、ここまでは想定内通りに来ている。それに今年は、何もかもが初めてだった昨年とは違い、様々なことを一度経験している強みもある。あとは、無事に本番を迎えてくれることを祈るのみ。是非とも世界の頂点に君臨する姿を見せてほしい。

(text by Kazuhiro Kuramoto)
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