V逸・阪神の課題と「4番・鳥谷」の狙い=来季見据えたコンバートに一考の余地

山田隆道

「3年連続Bクラスをなんとか回避できた」

今季の阪神を考えると、「3年連続Bクラスをなんとか回避できた」と考えた方が適している 【写真は共同】

 今季のセ・リーグのペナントレースは、巨人優勝という下馬評通りの結果となった。開幕前、ほとんどの野球評論家が巨人優勝を予想しており、中には「(巨人は)100勝以上するかもしれない」とまで口にする方もいた。もっとも、浪速の春団治こと川藤幸三さんだけはいつものように「優勝は阪神や!」と力強く断言しておられたが、これはもう川藤さんの持ちネタみたいなものだ。ご愛嬌である。
 したがって、2位・阪神(9月30日現在)の敗因を挙げるとすれば、それは細かい要素ではなく、総合的な力負けということだろう。途中、巨人が少しもたつき、阪神が必死に追い上げた時期もあったが、8月後半以降の佳境に入ってくると、巨人が阪神を直接対決で圧倒した。ウサギはひと休みしてもやっぱり速かったのだ。

 実際、現在の阪神の戦力はまだまだ整備と発展の途上であり、優勝するチームのそれではないように思える。夏場までは二桁の貯金を維持していただけに、終盤のここにきて10カード連続負け越しという不振に陥ると、大きなギャップを感じてしまうが、もしかしたらこれが阪神の本当の力なのかもしれない。どのチームも疲労が蓄積している終盤に負けが続くということは、すなわち地力が弱いということだろう。

 振り返ってみると、昨年までの阪神は2年連続Bクラスに沈んでいただけでなく、オフに金本知憲と藤川球児という00年代の阪神を支えた投打の主軸がどちらも退団し、一部のファンからは90年代の暗黒時代再来を不安視する声まであがっていた。球団もそこに危機感があったからこそ、昨年オフにメジャー帰りの福留孝介と西岡剛という二人の大物野手をはじめ、数々の新戦力を獲得したのだろう。その結果、福留と新外国人・コンラッドは期待を裏切ったが、西岡はチームに新風を吹き込む活躍を見せ、阪神はなんとかCS進出を決めた。そういう経緯を考えると、今季の阪神には「優勝を逃した」という表現より、「3年連続Bクラスを回避できた」という表現のほうが適しているのかもしれない。

狙いが崩れた福留の故障と、打てない守れない外国人

 そんな阪神の課題は、一にも二にも攻撃力である。今季ここまでのチーム総得点数と総本塁打数はともにリーグ最下位で、昨年も同じく最下位だった。特に打線の中軸でポイントゲッターとなるべき長距離砲の不在は、阿部慎之助や村田修一らを擁する巨人との決定的な差だ。チーム防御率はリーグトップなだけに、なんとかしたいところだろう。

 思えば開幕前、阪神の春季キャンプで何人かの野球評論家と話したところ、誰もがその課題を指摘していた。新井貴浩も早いもので今年36歳のベテランとなり、ただでさえ昨年は不振を極めたうえ、右肩痛の影響で開幕一軍すら危ぶまれていた。したがって、新たな主砲の育成が急務だったわけだが、目先の勝利を捨ててまで、すなわち3年連続Bクラスを覚悟してまで若手の育成だけに徹することができるほど、阪神という球団は外野が優しくない。だからこそ、今年36歳になるベテランの福留であっても、彼を獲得することで主砲不在の打線に短期的な延命措置を施せるなら、それなりに意味がある。その延命期間のうちに、新たな主砲を「勝ちながら育てる」という狙いだ。

 しかし、その狙いは崩れた。福留は故障続きで満足な結果を残せないまま、またひとつ年齢を重ね、さらに開幕4番に抜擢することで育成しようとした新たな主砲候補・新井良太(今年30歳だけど)も故障と不振に見舞われるなど、大きな飛躍を遂げることができなかった。そういう事態に新外国人が活躍すれば、これぞまさに助っ人いうものだが、そのコンラッドは先述した通り90年代の暗黒時代に大量生産されたダメ外国人を思い出させるほど、打てない守れないの大不振。中村勝広GMはそこをどう考えておられるのか?

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著者プロフィール

山田隆道

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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