V逸・阪神の課題と「4番・鳥谷」の狙い=来季見据えたコンバートに一考の余地
「地位が人を育てる」鳥谷4番の理由
シーズン終盤、4番に座る鳥谷。打力を伸ばすためにはショートからのコンバートも検討すべきだが 【写真は共同】
ただし、鳥谷に関しては、4番打者という環境要因によって、彼のバッティングが変わるのではないか、という期待も少しはあるはずだ。
ここ数年の打者・鳥谷の最大の特徴といえば、持ち前の選球眼の良さから生まれる四球の多さであり、それに伴う出塁率の高さだ。つまり、積極的にスイングして走者を返すポイントゲッターのバッティングをしているのではなく、ボールを選んで巧みに出塁するチャンスメーカーのバッティングをしているということだろう。
しかし、本来の鳥谷には、さすがに4番は難しいにしても、打線の中軸でポイントゲッターになれるだけの能力はあると思えるのだ。なにしろ、キャンプの打撃練習で見せる鳥谷のスイングは非常に力強く、打球のスピードもチームトップクラスだ。また、2010年には打率301、19本塁打、104打点という立派な主砲と呼べる成績を残しており、2009年には20本塁打も記録。統一球以前とはいえ、左打者に不利な甲子園球場を本拠地にして、さらにショートを守りながら、これだけの数字を残したのは能力が高い証拠だろう。
それらを考えると、首脳陣が近年の鳥谷に対して「もっと積極的にフルスイングしてほしい」と思うのは当然だろう。だからこそ、鳥谷に4番打者という否が応でも主砲のバッティングをしなければならない地位と責任を与え、それによって彼の意識を変えようとしているのかもしれない。野村克也が言うところの「地位が人を育てる」というやつだ。
打力生かすならショートから外せ
ただし、もし来季も鳥谷の4番があるとしたら、今度はショートというポジションが引っかかる。いくら強靭な体が売りの鳥谷であっても、来年33歳という年齢を考えると、ショートで4番はさすがに過酷だろう。過去を振り返っても、4番ショートを年間通して務めた選手は、国鉄移籍後の豊田泰光や日本ハム・田中幸雄など数えるほどしかいない。
実際、一部の野球評論家は数年前から「鳥谷の打力を伸ばしたいなら、サードか外野にコンバートしたほうがいい」という説を唱えている。いまや球界屈指の名手でもある鳥谷をショートから外すのは悩むところだろうが、4番打者という役割に重点を置くなら一考の余地があるかもしれない。二兎を追う者は一兎をも得ず、だ。
最後に、長距離砲不在の阪神にファームから一筋の光が射し込んでいることを付け加えておく。現在、ウエスタンリーグで16本塁打を放った未来の大砲候補・森田一成(もう6年目だけど)だ。主なポジションがファーストであり、さらにその守備力にも難があることを指摘されているが、現在の一軍のファースト・新井貴の年齢と最近の成績を考えると、ここらで森田を起用してみてはどうか。和田監督、CS出場が決まり、残り試合も少ないことだし、いかがですか?
<了>