柏の「ACL4強」を支えた2つの勝因=“仮想“アルシャバブと選手の適応力
分析と準備でアウエー戦での強さを発揮する柏
システム変更で中盤に入った田中(左)は、アルシャバブの中盤に自由を与えなかった 【写真は共同】
柏はアウエーにもかかわらず、非常に落ち着いた試合運びを見せた。むしろ今シーズンのACLでは、敵地で無類の強さを発揮しているからこそ、ここまで勝ち上がることができていると言っても過言ではない。このアルシャバブ戦前日の会見でも、「なぜ、アウエーでここまで結果が出ているのか」という質問に対して、ネルシーニョ監督は毅然とした態度でこう答えた。
「ACLは、試合ごとの間隔が開いている。その間に相手のチームの分析し、準備をじっくりと進められている」
もちろんそれは、準々決勝までの“アウエー全勝”という勝ち上がり方にも、結果として十分に表れている。そして指揮官は翌日の試合でも、自身の発した言葉が偽りや建前ではないことを証明してみせた。1カ月前、ホームで行われた第1戦では、フェルナンド・メネガッゾ、マクネリー・トーレスを軸としたアルシャバブの中盤に翻弄され、1−1のドローに終わった。90分を通してみれば、相手に主導権を握られる苦しい展開となってしまったが、柏はアウエーの第2戦で、その相手のキーマンを封じることに成功した。
“仮想“アルシャバブとなった横浜FM戦
アウエーでのアルシャバブ戦では、フレキシブルに動く相手の中盤3枚に対し、柏は大谷秀和、栗澤僚一のダブルボランチに加え、田中順也を低い位置に置くことで3対3の図式を作り、ゾーンでマークを受け渡しながら、相手のストロングポイントを消していった。ネルシーニョはこう振り返る。
「大谷をアンカーにして、栗澤と順也でメネガッゾとアブドゥルマレク・アルハイバリに付き、相手のビルドアップを抑える。前回、柏での試合ではトーレスがわれわれの2ボランチの背後でフリーになっていたが、今日はそこにアンカーの大谷がいたので、トーレスに自由を与えなかった」
それが、アルシャバブで4−1−4−1を用いた狙いだ。上記したように、横浜FM戦と全く同じ意図。さらに「第1戦の反省点を生かし、それを選手に落とし込んだ」とも語っており、前日会見の場で述べた「分析の成果」をピッチ上で実践してみせた。
相手の中心選手2人を消すことに成功
このためアルシャバブからは、第1戦で見せたような攻撃の幅の広さ、ダイナミックさが見られなくなり、ロングボールによる単調な攻撃やパスの精度を欠く拙攻が続いた。時折、右サイドのラフィーニャが単独突破で状況を打開しようとするも、周囲のサポートが少なく、こちらもほとんど決定機には至らない。
ネルシーニョの狙いがピタリとハマった要因について、栗澤は「横浜FM戦で、コミュニケーションを取りながらできたのが大きかった」と、やはりナビスコカップの経験が存分に生かされていたことを明かした。攻撃の起点を潰され、思うように試合を運べないアルシャバブとは対照的に、柏は「良い守備から良い攻撃へ」というサッカーの格言通り、次第に自分たちのリズムへと引き込みながら、相手からボールを奪い取り、カウンターを仕掛けていく。失点直後に相手のオウンゴールで追い付くなど、運にも助けれた柏は、ゲームの主導権を握り続けていた。