宇佐美貴史がガンバで放つ圧倒的な存在感=活躍を支えるドイツで得た身体の強さ

高村美砂

「ピッチの内外で輝き続けなければいけない」

 その言葉を体現するがごとく、神戸戦を皮切りに宇佐美は圧倒的な存在感を示し続けた。続く26節の東京ヴェルディ戦でこそゴールはなかったものの、8月最初の試合となったアウエーでのファジアーノ岡山戦では、神戸戦と同じく相手に先制点を許した後、反撃ののろしを上げる同点弾を決める。以降も、前線で圧倒的な強さ、キレを示しながら攻撃を彩った宇佐美は、チームの勝利に貢献した。

 そう言えば、その岡山戦後、微笑ましい光景が見られた。この日のkankoスタジアムには同スタジアムの最多動員記録を塗り替える1万8269人もの観客が詰めかけ、ホームチームの岡山はもとより、G大阪にも多くの声援が贈られたが、試合後もそのフィーバーぶりは収まらず。G大阪の選手が乗り込む移動バスの近くには、サインを求める多くの人だかりが。そんなファンの姿を目にした宇佐美がバスに乗り込もうとする直前に足を止め、チームスタッフに声を掛けたのだ。

「バスの出発は何時ですか?」

 しかも、その時間を確認し「あと5分はありますね」と返事をすると、一人、スタスタと人だかりの元へ。その後は、約7分間にわたって、黙々と差し出された色紙やグッズにサインをしたため続けた。その姿に復帰にあたって彼が語った言葉がよみがえる。

「海外に行って、自分がこれまでどれだけ多くの人に支えられ、応援されてプレーしてきたのかを思い知った。しかも、気持ちよくドイツに送り出してもらった上に、今回こうして復帰するにあたっても本当にたくさんの人が温かい声を掛けてくれたり、声援をおくってくれている。その人たちに感謝の気持ちを伝えるためにも、僕はピッチの内外で輝き続けなければいけないと思っています」

プレーに幅が生まれ、いろんな仕掛けができるようになった

 話を戻そう。そうして8月最初の岡山戦でゴールを決めると、試合を重ねるごとにコンディションを高め、かつ、同じ時期に加入したFWロチャとのコンビネーションにも充実を見せながら、前線で存在感を発揮する。その中では、29節のコンサドーレ札幌戦で1ゴール、30節のガイナーレ鳥取戦で2ゴール、そして31節の横浜FC戦で1ゴールと3試合連続のゴールを挙げるなど同月だけで5ゴールと結果を残し、チームの首位独走を後押しした。

 中でも目を引いたのが、以前にJリーグでプレーしていた際には見れらなかった身体の強さだ。そう言えば、以前、ドイツでの2年間における『収穫』として「筋トレや実際のトレーニングの中で、身体の強さを身につけたせいか、コンタクトプレーを恐れなくなったこと」を挙げていた宇佐美だが、復帰戦からここまでの8試合で7ゴールという驚異的な数字を残し続けているのも、そうした身体の強さを手に入れたからこそ。それによって、プレーに幅が生まれ、ドリブル一辺倒ではない、いろいろな仕掛けができるようになったことが、今の活躍を支えていると言っていい。といっても、まだ8試合。彼にとっては新シーズンが始まったばかりだと考えるなら、ここからの先の試合でこそ、彼の真骨頂というべきプレーがもっと楽しめるに違いない。

<了>

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著者プロフィール

関西一円の『サッカー』を応援しようとJリーグ発足にあわせて発刊された、関西サッカー応援誌『GAM』『KAPPOS』の発行・編集に携わった後、同雑誌の休刊に伴い、1998年からフリーライターに。現在はガンバ大阪、ヴィッセル神戸を中心に取材を展開。イヤーブックやマッチデーブログラムなどクラブのオフィシャル媒体を中心に執筆活動を行なう。選手やスタッフなど『人』にスポットをあてた記事がほとんど。『サッカーダイジェスト』での宇佐美貴史のコラム連載は10年に及び、150回を超えた。兵庫県西宮市生まれ、大阪育ち。現在は神戸在住。

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