56年ぶり五輪つかんだ東京の勝因=IOC委員の心をつかんだ完璧な招致活動

高樹ミナ

忘れてはならない国内の盛り上がり

ロンドン五輪の凱旋パレードには50万人が集まり、招致の追い風となった 国内の盛り上げに加え、国際PRでも大きなインパクトを与えた 【写真:アフロ】

 また、今回の招致活動で忘れてはならないのが国内の盛り上がりだ。招致活動はIOC委員の集票がメーン。都民・国民の支持率が高くても、IOC委員の票が集まらなければ招致は勝ち取れないと言われるが、支持率が低くてもまた招致を勝ち取ることはできない。そんな中、国内PRは招致レースの時期や段階に応じた戦略を立て機運を高めていった。

 12年ロンドン大会での日本代表の活躍も大きな追い風となった。約50万人の人々が通りを埋め尽くした銀座の凱旋パレードは国内はもとより、国際PRにおいてもインパクトを与えたことだろう。実際、前回招致から課題だった支持率もIOCの調査で70%にまで達し、東京の最大の弱点を克服。これは、招致関係者の大きな自信になったはずだ。支持率の高さは国内の招致スポンサーの数にも表れ、最終的には20社を超えるスポンサーが集まった。このスポンサー収入は国際招致活動の幅を大きく広げるという効果もあったはずだ。

7年後の夢の祭典に向けて

 東京は開催計画書、国内盛り上げ、国際PR、プレゼンテーション、ロビー活動とすべての招致活動を高い次元でやり遂げ、五輪開催都市の栄冠を手に入れた。今後、5カ月以内に組織委員会を立ち上げ、7年後の祭典に向けた準備が本格的に開始される。安倍首相が約束した福島第一原発の汚染水の処理をはじめ、競技会場の建設や空港・アクセス道路の整備など、さまざまなプロジェクトが日ごとに進んでいくことだろう。

 石原慎太郎・前都知事の時代から訴え続けてきた、「自信をなくした日本をスポーツの力で元気にする」というメッセージ。9月7日の開催都市決定は、間違いなく、日本中を元気にさせた。これから7年、“日本再生”のシンボルとして東京オリンピック・パラリンピックの準備が進められていく。

<了>

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著者プロフィール

スポーツライター。千葉県出身。 アナウンサーからライターに転身。競馬、F1、プロ野球を経て、00年シドニー、04年アテネ、08年北京、10年バンクーバー冬季、16年リオ大会を取材。「16年東京五輪・パラリンピック招致委員会」在籍の経験も生かし、五輪・パラリンピックの意義と魅力を伝える。五輪競技は主に卓球、パラ競技は車いすテニス、陸上(主に義足種目)、トライアスロン等をカバー。執筆活動のほかTV、ラジオ、講演、シンポジウム等にも出演する。最新刊『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)監修他。

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