56年ぶり五輪つかんだ東京の勝因=IOC委員の心をつかんだ完璧な招致活動
最終プレゼンでスピーチした7人。安倍首相(中央)をはじめ、それぞれの立場でIOC委員に東京をアピールした 【Getty Images】
敗北を喫したコペンハーゲン(デンマーク)でのIOC総会から4年。16年招致活動に参加した立場から、今回東京が成功を収めた勝因を振り返ってみたい。
懸念を払拭した東京の最終プレゼン
期待に応えた安倍首相はプレゼン後の質疑応答でIOC委員から出た汚染水問題の質問に対し、WHO(世界保健機関)の基準に照らし合わせた具体的な数字を明示。「東京は安全。食べ物も水も高い安全基準を満たしている」と力強く断言した。問題を抱えていたとしても、その解決に向け、国を挙げて真剣に取り組んでいく姿勢をIOCは見ていると言われる。それが本当ならば、安倍首相の回答はパーフェクトだったと言えるだろう。
計画性のある内容に加え、IOC委員のハートに訴えるエモーショナルな演出も効果的だったように思う。「震災支援のお礼」と称して現地入りされた高円宮妃久子殿下が前半部分をIOCの公用語であるフランス語で話され、五輪精神に敬意を表されたことは、多くのIOC委員の共感を呼んだのではないだろうか。
そして、太田雄貴選手(フェンシング)とパラリンピアンの佐藤真海選手(陸上)の訴えは、大会の主役であるアスリートの声を代弁し、滝川クリステル氏(招致“Cool Tokyo”アンバサダー)がジェスチャーを交えて語った「おもてなし」の精神も秀逸だった。
IOC総会直前、「今回は最終プレゼンテーションが非常に重要」とトーマス・バッハ副会長が語っていたが、東京のプレゼンテーションは他都市に比べ、その完成度が頭一つ抜けていた。
基礎票の拡大を成功させたロビー活動
この数字の伸びは最終プレゼンテーションだけで獲得できるとは到底思えない。開催計画書の質を向上させた招致委員会の計画書策定グループと、何よりもIOC委員一人ひとりと面会し、東京支援のためにさまざな働きかけを行ったロビーチームの功績が大きかったものと想定できる。特にロビー活動の先頭に立った竹田恆和・招致委員会理事長(IOC委員)、水野正人・招致委員会副理事長の長年の努力に敬意を表したい。