sportsnavi

大学No.1右腕・大瀬良大地が目指す理想
涙の敗戦を乗り越えたドラ1候補の秋
ドラフト1位候補に挙げられる九州共立大・大瀬良。今春の敗戦から新たに手にしたスローカーブも駆使し、7月の日米大学野球では好投した
ドラフト1位候補に挙げられる九州共立大・大瀬良。今春の敗戦から新たに手にしたスローカーブも駆使し、7月の日米大学野球では好投した【写真は共同】

「高校時代、甲子園に出たことでプロを意識するようになりました。大学では、即戦力としてドラフト1位で指名されるような選手になれるように、と頑張ってきました。(ドラフトまで)あと2カ月を切って、楽しみですね。でも、今は秋のリーグ戦へ、これまでやってきたことのすべてを出し尽くしたい」


 2013年ドラフト会議は10月24日に行われる。上位候補の筆頭である大学球界ナンバーワン投手が、九州共立大の大瀬良大地である。身長186センチ、体重89キロの恵まれた体格。最速152キロの剛腕投手だが、制球力にも定評がある。9月7日に開幕する福岡六大学野球秋季リーグ戦がラストシーズン。大学4年間の集大成、そしてドラフトへの思いを聞いた。

広島・今村に投げ勝った右腕

 大瀬良は高校時代(長崎日大高)から名の知れ渡った投手だった。一気に有名になったのは3年生の夏、県予選準々決勝だ。相手はその年のセンバツで全国優勝した清峰高。エースは現・広島の今村猛だった。その強敵を倒し、甲子園に出場。1回戦で菊池雄星(現・埼玉西武)を擁する花巻東高に敗れたが、5回までは無失点に抑える好投(結果は8回途中4失点)と、当時最速147キロで好投手として評価された。

 ほかにも同世代では堂林翔太(広島)や今宮健太(福岡ソフトバンク)ら、すでに1軍で活躍している選手が多い。それでも、大瀬良はプロ志望届を提出せずに大学進学を決めた。


「自分はまだまだという思いがありましたからね。甲子園には出場したけど、体も細かったし足りないものだらけ。大学に行って土台を作ってからプロを目指した方が正解かなと思ったんです」


 九州共立大では1年春から主戦を任された。下級生の頃は今村の活躍を伝える新聞記事を部屋の見える場所に貼り、自分を奮い立たせる材料にしたという。細身の体は、大学入学後に本格的に始めたというウエートトレーニングの成果もあって体重が14キロ増えた。4年春までの通算成績は34勝4敗、防御率0.91。もはや敵なしである。

 だが、大学最後のリーグ戦を目前に、大瀬良の表情に余裕は感じられない。


「秋のリーグ戦は監督から『1点もやるな』と言われています。それくらい強い気持ちでやらないと優勝は厳しい。防御率ゼロを本気で狙います」


 大瀬良の頭の中には「雪辱」の2文字しかないのだ。今春は3位。九州共立大は過去5年連続で春季リーグを制してきたが、自分の代で途切れさせてしまった。しかも自身の通算4敗のうち、この春だけで3敗を喫した。最上級生として、エースとして、主将として、すべての責任を背負った右腕は優勝を逃した瞬間、膝を地面について号泣した。

プライド捨て求めた新境地

 しかし、挫折は人を成長させるスパイスだ。あの敗戦があったからこそ、プライドを捨て、新境地を求めることができた。7月の日米大学野球に代表エースとして参加。アメリカ打線相手に150キロの直球で強気に押したが、それ以上に目立ったのは110キロ台のスローカーブだった。


「以前は試合の中で1球も使わないような球種だったけど、あの時は10球以上投げました。自分の武器はストレートだと思っていますし、『困ったらストレート』が僕のスタイル。緩い球を打たれたら納得できないと思っていました。だけど春のリーグ戦で負けて、やはり野球は甘くないと痛感しました。より高いレベルの野球をやるためには緩急が必要なんです」


 8月21日、ホンダ熊本とのオープン戦に先発した大瀬良は、やはり直球とカーブのコンビネーションで相手を翻弄(ほんろう)した。今年の都市対抗にも出場した強豪チームを相手に2失点完投勝利した。この日の最速は148キロ。「ホンクマ(ホンダ熊本)さんに勝ったのが初めてだったので嬉しかった。素が出ちゃって、オープン戦なのに最後はガッツポーズもしちゃいました(笑)」と照れた。憧れの投手は斉藤和巳(元ソフトバンク)。気迫あふれる投球スタイルは自身の持ち味だという。


 剛から柔ではなく、剛腕から強腕へ。誰よりも強いエースになったことを証明するためのラストシーズン。大瀬良の投球が、ドラフト戦線をさらに熱くする。


<了>

田尻耕太郎
田尻耕太郎
 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

スポナビDo

イベント・大会一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント