錦織ショック、トップ10の重圧に負けた=期待から一転、試練の全米オープンに

山口奈緒美

世界ランキング179位に不覚

上位進出が期待されたが、全米オープンはまさかの初戦敗退。トップ10入りのプレッシャーは予想以上に錦織を苦しめた 【Getty Images】

 錦織圭(日清食品)の全米オープンは、開幕からわずか2時間で静かに幕を下ろした。4−6、4−6、2−6。グランドスラムの1回戦敗退は一昨年の全米オープン以来だ。しかも、相手は世界ランキング179位と、2011年以降敗れた対戦相手の中では最も低い。

 錦織頼みの日本テニス界のショックは大きい。つい昨日までは、錦織の活躍を期待する、あるいは人々の関心を煽る見出しがあふれていた。
「トップ10入りを懸けた戦い」「相性のいい全米オープンで上位進出狙う」「目標はベスト8以上」「順当なら4回戦でフェデラーと対戦」――1回戦で当たる予選上がりの179位の選手のことなど、誰もが軽い手慣らしくらいにしか考えていなかったと言ってもいい。

 しかし、マイナス要因は決して小さくなかったのだ。錦織と同じ23歳のダニエル・エバンス(英国)はなかなかの曲者で、思いのほかサーブが良く、決め手はなくてもしぶとく、不意に強打を放つ。もっとも、今回は相手云々ではなく、錦織の方に問題があっただろう。

左膝の違和感、ツアー成績が影響

 まずはウィンブルドンでも悩まされた左膝の炎症。2日前の記者会見では現状をこう説明している。
「まだちょっと膝に違和感は残っていて100パーセントではないですけど、かばいながらなんとかできていると思います。炎症は試合に出ているうちはなかなか治らないと思うので、これとつき合いつつ、オフシーズンまでやっていかないといけない」

 悲観的ではないが、スピードも武器とする錦織にはかなり深刻な状況ともとれる。実際、試合中の動きは決していい状態ではなく、第1セットを逆転で奪われてからは落胆を隠せず、予選の3試合を勝ってきたエバンスが勢いに乗った。

 試合後、錦織は膝の影響はなかったと繰り返し、サーブの調子が悪かったことやうまく相手を振り回せなかったことなどを敗因に挙げた。一方で、1セットを失ったダメージを修復できなかったのは、ここまでのツアー成績と無関係ではないだろう。

 ウィンブルドン後に出場した全米シリーズ3大会の結果は、ベスト16、ベスト16、1回戦敗退。3敗のうち2敗の相手は格下だった。「ミスが多くて、気持ちがどんどんマイナス思考になっていった」という。全米オープン開幕までの調整で上り調子の手応えはあったが、今の錦織に最も必要なのは実戦での自信だった。約2週間ぶりの試合で最初のセットをいい形で取れば、自信につながったかもしれない。しかし、逆転で落としてしまっては、また不安が頭をもたげるのは無理もない。

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著者プロフィール

1969年、和歌山県生まれ。ベースボール・マガジン社『テニスマガジン』編集部を経てフリーランスに。1999年より全グランドスラムの取材を敢行し、スポーツ系雑誌やウェブサイトに大会レポートやコラムを執筆。大阪在住。

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