これぞ“高校野球の名勝負”=仙台育英×浦和学院の死闘
最大のドラマは8回だった
「左方向を狙っていたけど、目線が合いませんでした。中盤以降は球威が落ちていましたが、予想以上のボールがきて対応できなかった」
という上林を空振り三振に斬って取ると、続く水間俊樹、小林遼もいずれもストレートのみで三振。浦和学院は、最大のピンチを切り抜けた……ように見えた。
ナイトゲームになりながら、ドラマの結末を見届けようという観衆は、ほとんど席を立っていない。そして、9回。投球数が180に達しようとした小島に異変があった。一死から、八番・加藤尚也に初球を投げたところで左足がけいれん。おそらく熱中症によるものだ。治療してふたたび登板したものの、小野寺に左前打を許し、山口にスイッチしたところで話は冒頭に戻る。仙台育英、サヨナラで2回戦進出――。
辛口でいうなら名勝負というには物足りない、だが……
「5点差を追いついたところは、選手たちのエネルギーのすごさを感じましたが、継投を延ばしたのは私の責任です。ただ、できるなら最後まで小島で終わりたかった」
辛口でいうなら、名勝負というには四死球やミスからの失点の多さがやや物足りない。だがここで私事ながら、試合終了後に家人から届いたメールをそのまま引用する。
『試合が終わって号泣の小島くんに監督さんが「来年もある」って。更にカメラに囲まれる中、監督さんは「うなだれるな」って表情を変えずに何度も小声で言ってました。グラウンドを出るときはてをつないでお父さんと息子みたいでした』
4万2000の大観衆、そしてテレビで観戦した多くの高校野球ファンが、この勝負を堪能したはずだ。