大津祐樹が司るVVVの攻撃サッカー=1部昇格へ手応えをつかんだ一戦
VVVサポーターも興奮の会心の勝利
ファンの声援にこたえる大津(中央)。VVVの攻撃の中心として君臨した 【VI-Images via Getty Images】
1−0で迎えた90分、ウィーレム2のイッペルの強烈なシュートがバーをたたき、VVVのサポーターは安堵(あんど)のため息をついた。さらに前掛かりになってウィーレム2は同点弾を狙いにいった。しかし、VVVは交代出場のFWヌウォフォー、クーパーが絡んだカウンターから、この日、今ひとつの出来だったウインガー、ライメリンクがとどめのゴールを決め、勝利を決定付けた。非常にスリリングな攻防の末の勝ち点3にハイ・ベルデン会長も「この勝利はチームに自信をもたらす」とご満悦の表情。スタジアムに集ったサポーターの興奮もなかなか鎮まらなかった。
試合の中で、徐々にVVVの選手は自信をつかみ、チームとして成長していった。左ウインガーのウォルテルスは序盤、ボールロストを繰り返していた、35分、相手ゴール前に2人もフリーの選手がいたものの、自分でシュートを放ってしまい、サポーターから激しいブーイングを浴びていた。そんな彼が前半終了間際、ショートカウンターから先制ゴールを決めると、後半は左サイドで伸び伸びとプレーし、「このアタッカーは多くの間違いも犯したが、素晴らしい先制ゴールを決めた。採点7」(地元紙デ・リンブルハー)とヒーローになったのだ。
立ち上がり5分こそ、チャンスを作ったVVVだったが、その後はやや硬くなった。そんなナーバスなチームを救ったのは15分、守護神マエンパーの好セーブであり、緊張をほぐしたのは中盤での大津祐樹のキープ力であり、右サイドバックのヨッペンがみせたオーバーラップだった。彼らは皆、昨季エールディビジで経験を積んだ選手である。20分過ぎからVVVはウィーレム2を圧倒し始め、久しぶりにホームスタジアムのデ・クールは攻撃サッカーの醍醐味(だいごみ)に沸いたのだった。
“10番”のポジションに君臨し大津
「この試合はすごく大事だったので、チームとして勝てたことがすごく良かった。個人的にも良いプレーを要所要所で出せていた。でも最後の方、ちょっと足がもたなくなり、動けなくなってきたのを監督が感じてくれた。先週のアイントホーフェン戦からちょっと足に問題があった。そのことはチームのトレーナーも知っていた。ちょっと体が動かなくなったけど、それまではチームのためにプレーできたと思う。あとは本当にゴールだけ」(大津)
アイントホーフェンとの開幕戦(0−0)では本当の“10番”と言うより、「2トップと1.5列目の間の“1.7”だった」(大津)というかなり前めのポジションでプレーした大津だったが、ウィーレム2戦は“10番”のポジションに君臨し、多くのボールに絡んでプレーした。
「ボールも受けられるし、周りも使えるし、すごくやりやすかった。チームをコントロールできたのは良かった。今日に関してはひとり、ふたり、交わして次のプレーにつながるようにすることで、味方も優位になる状況でボールを受けられた。相手がそっちを読んできたら、自分で突破できる。そういった点ですごく良かったと思う」(大津)
センターバックからのビルドアップなど、まだまだチームに課題は残るが、終始攻め込まれてしまったアイントホーフェン戦に比べればはるかに良いサッカーを披露したVVV。「VVVはまだまだかもしれないけれど、確実に下を争うチームでないということを証明できたと思う。僕らが目指しているのは優勝であって、1部に昇格させることだけ。そこに向かって全力でプレーできればいいと思う。個人的には、あとは結果だけを考えてやりたいですね」(大津)。チームもサポーターも今季はやれるという手応えをつかんだ一戦だった。
<了>
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