混乱が続くアルゼンチンリーグの問題=迷走する解決策と有望選手の流出

アルゼンチンフットボール界の重要な課題

 アルゼンチンリーグは開幕前から多くの問題を抱えている。国外の選手と契約する際に、各クラブが脱税を行っていると政府が疑いはじめたことで、新加入選手の登録手続きは複雑極まりないものとなっている。また、いまだに死傷者を出し続けている暴力対策として、アウエーチームのファンのスタジアム入場が禁止されたことも賛否両論を呼んでいる。

 アルゼンチンフットボール界が取り組むべき重要な課題。それは頻繁に日程や試合時間の変更を繰り返す中で、国内リーグが失ってきた重要性を取り戻すための確固たるシステムを見いだすことだ。これらの多くは暴力事件が生じたためのやむを得ない変更であったのは事実だが、アルゼンチンフットボール協会(AFE)や政府すら進むべき方向性を見いだせていないのもまた事実なのだ。

 アウエーファンのスタジアム入場禁止にしても、それが実際に起きている問題の解決策になるとは思えない。死傷者が生じた近年の暴力事件は、同じクラブのバッラ・ブラバ(過激派集団)内における利権争いがほとんどだからだ。

 それに加え、選手の流出も止まらない。今オフもスコッコ、ワルテル・エルビティ、ルーカス・ビアトリ、フアン・イトゥルベ、クレメンテ・ロドリゲス、ルイス・ファリーニャ、ファクンド・フェレイラ、ジノ・ペルッツィらが、より良い契約条件を求めて他国のクラブへと移籍していった。

 ヨーロッパのトップリーグでプレーする自国のスター選手たちがテレビの向こうで活躍する反面、国内リーグには若手かベテラン選手しかいない。アルゼンチンフットボール界は長らく続いてきたその二面性を打破すべく、大きな変革を行うべきときを迎えている。

<了>

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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