香川が恩師に見せた成長した姿=“古巣凱旋”も新旧8番対決は実現せず

小田尚史

セレッソ大阪ファミリーの夢の一夜

古巣セレッソ大阪との凱旋試合でゴールを決めた香川。「恩師に成長した姿を見せたかった」と語った 【Getty Images】

「ジャパンツアー」でマンチェスター・ユナイテッドの一員として来日した香川真司。日本での2試合目は、古巣セレッソ大阪との凱旋マッチとなった。スタメン発表で香川の名が場内にコールされた瞬間、44,856人の超満員に膨れ上がった会場は割れんばかりの拍手に包まれた。

 直接FKでネットを揺らし、ミスターチルドレンの名曲「終わりなき旅」をバックに場内を1周した壮行試合から3年。その旅の経過は極めて順調、どころか、送り出したわれわれの予想をはるかに超える成功ぶりだ。ボルシア・ドルトムントでは早々に主力の座をつかみ取ると、ブンデスリーガ2連覇を果たし、あのアレックス・ファーガソン元監督に見初めらユナイテッドへ入団。そして、プレミアリーグ初となるアジア人選手によるハットトリックを成し遂げ、ユナイテッドのプレミア制覇にも貢献した。その歩みはまさに、「人生の勝者」(C大阪・レヴィー・クルピ監督)と呼ぶべきものである。もちろん、その内実は、想像を絶する厳しさとの戦いの連続であったであろうことは想像に難くない。3年間の間には、けがによる長期離脱もあった。ユナイテッドという歴史あるビッグクラブでプレーするプレッシャー、および、日本代表で10番を託された重圧もあっただろう。その全てを受け止め、努力し続ける本人に対して、軽々しく“順調”などと形容するのは、はばかられるかもしれない。それでも、“高ければ高い壁の方が登ったとき気持ちいい”という「終わりなき旅」に出てくる歌詞を地でいく香川に対し、われわれはこれからも“順調”な歩みを期待して、エールを送り続ける。

 桜が生んだ“世界の香川”がユナイテッドの一員として長居スタジアムに凱旋。

 まさに、C大阪ファミリーとしては、夢の一夜となった。

郷愁に浸ってばかりはいられない“古巣凱旋”

「こうした形で真司と再会できることは最高なこと」。試合を4日後に控えた7月22日、C大阪の舞洲グラウンドにて、今回の一戦についてクルピ監督はこうコメントした。香川については、「彼は日本にいた頃も常に自分の目標を定め、向き合い、到達せんと努力を重ねてきた。海外に行ってもそれは同じ。ドイツで2年、イングランドで1年を経験し、タイトル獲得にも貢献することで、セレッソにいた頃よりも、さらに成熟した選手になった」と評価する。香川がC大阪に残した功績は大きく、クラブでの練習の日々が、世界へとつながることを明確に示した。もともと、世界中で親しまれているサッカーというスポーツにはワールドワイドな側面があるが、香川の活躍によって、“海外でプレーすること”の輪郭がくっきりと帯びたのだ。
 同じグラウンドで切磋琢磨していた仲間がスターダムに駆け上がる過程を目の当たりにして、周囲が刺激を受けないはずがない。香川が巣立ってから、C大阪で香川とベストな関係を築いた乾貴士(現フランクフルト/ドイツ)が後を追い、大分トリニータから移籍後、C大阪では香川の次に背番号8を受け継いだ清武弘嗣(現ニュルンベルク/ドイツ)も続いた。そしてその遺伝子は、香川とともにピッチでプレーすることはなかった後輩にも受け継がれている。今季、C大阪U−18からトップ昇格した南野拓実は、「自分がセレッソユースのとき、香川選手は南津守でやっていた。そうやって身近でプレーしていた選手が世界で活躍している姿は自分にとっても刺激になる。自分もいつかは世界で、という気持ちになるし、自分の描いている目標に向かってしっかりやりたい」とキッパリとした口調で話す。

 一方、当の香川にとって今回の一戦は、“古巣凱旋”というノスタルジアに浸ってばかりいられる余裕はなく、目に見える結果も求められる一戦だった。試合前日の記者会見では、「自分を育ててくれて、世界へ送り出してくれたチームとの対戦なので、楽しみ」と話す一方で、「コンディションはもっと上げていく必要はあるし、大事なのは開幕なので、けがをしてはいけないとも思う。その範囲で、しっかりと全力で戦う」と現実を見据えた発言も残した。ポジション争いについて問われた際には、「去年から(ユナイテッドの)選手層が厚いことは感じていたし、このクラブでポジション争いがあることは当たり前のこと。結果を出し続けていかないといけない。明日の試合も、日本で行われることで盛り上がるけど、僕はアピールの一環としてプレーしたい」と厳しい表情で話した。

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著者プロフィール

1980年生まれ。兵庫県出身。漫画『キャプテン翼』の影響を受け、幼少時よりサッカーを始める。中学入学と同時にJリーグが開幕。高校時代に記者を志す。関西大学社会学部を卒業後、番組制作会社勤務などを経て、2009年シーズンよりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』のセレッソ大阪、徳島ヴォルティス担当としてサッカーライター業をスタート。2014年シーズンよりC大阪専属として、取材・執筆活動を行なっている。

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