香川が恩師に見せた成長した姿=“古巣凱旋”も新旧8番対決は実現せず

小田尚史

「すべての人の記憶に残るゲームになった」

香川(左)は、ハーフタイム時にクルピ監督と握手を交わした 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 迎えた試合当日。「たくさんのサポーターが本当に素晴らしい雰囲気を作ってくれたことに感謝したい」と試合後に開口一番、香川が話したように、会場のムードは完全に“でき上がっていた”。その中で、C大阪は、「われわれはシーズンの真っ只中。勝ちにいく」と試合前にクルピ監督が宣言した通り、プレシーズンでコンディションが万全ではないユナイテッドに対して果敢に仕掛け、2点を奪った。「いろんなプレッシャーがある中で活躍している真司くんはすごいと思う。でも、すごいと思うだけではなく、自分も負けないようにしたい」と試合後に話した杉本健勇が先制点を決め、「自分も(香川と同じように)世界のレベルでプレーしたいという夢があるので、今回の機会は自分にとって貴重な体験だった」という南野が2点目を決めた。

 中でも、南野のゴールはユナイテッドも真っ青のワールドクラスの一撃だった。香川も、「やっていて、セレッソらしいサッカーだなと思った。選手同士の距離感もよく、しっかりボールを回していた。若い選手もどんどん出てきている」と古巣のサッカーを賞賛。もちろん、香川とユナイテッドも、随所に高い技術と迫力、凄味を見せつけ、主役の香川にも待望の得点が生まれた。54分、ギグスの折り返しをペナルティエリア内で受けると、DFとGKの股を連続して射抜くゴールを決めた。直後の58分にベンチに退いたが、「セレッソと対戦することはやはり特別なこと。自分がプロとして育った場所なので、特別な思いはあった。今日は自分のサッカー人生の中でも、1つの歴史というか、誇りに思う日。シーズンも始まっているので、余韻に浸る暇はないが、今日は本当に素晴らしい一日だった」と、厳しい生存競争の中で、つかの間の感慨に浸った。後半アディショナルタイム、途中出場のザハが同点弾を決め、ユナイテッドがジャパンツアーでの連敗を免れると同時に、「非常にいい雰囲気の中でスペクタクルな試合ができたことをうれしく思う。すべての人の記憶に残るゲームになったのではないか」とクルピ監督が総括したゲームの幕が下りた。

柿谷との再会はならず

「レヴィーにも成長した姿を見せたかった。レヴィーが監督になってから試合に使ってもらって、育ててもらった。感謝の気持ちは強い。今日は2つ決定機を外しているので、『決めるところで決めないとダメだ』と思っていると思うけど」と香川が話した恩師レヴィー・クルピ監督とも、ハーフタイムにがっちり握手を交わした。そんな中、今回の香川のC大阪凱旋で1つ残念だったのは、今季のシーズン当初から、「真司くんのいるユナイテッドとの対戦が楽しみ」と話していた柿谷曜一朗との新旧8番対決が実現しなかったこと。2006年に同期としてC大阪に入団後、異なる道を歩みながらも、現在は世に己の才能を存分に見せつけている両者の再会はもうしばらく先となった。ただし、香川がユナイテッドの一員として長居に凱旋、そして柿谷がA代表のデビュー戦で初得点という、セレッソサポーターおよび関係者にとっては実に贅沢で濃い1週間を過ごせたのだから、文句は言うまい。夢の続きは日の丸を付けての共演か――。

<了>

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著者プロフィール

1980年生まれ。兵庫県出身。漫画『キャプテン翼』の影響を受け、幼少時よりサッカーを始める。中学入学と同時にJリーグが開幕。高校時代に記者を志す。関西大学社会学部を卒業後、番組制作会社勤務などを経て、2009年シーズンよりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』のセレッソ大阪、徳島ヴォルティス担当としてサッカーライター業をスタート。2014年シーズンよりC大阪専属として、取材・執筆活動を行なっている。

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