実力証明した「社会人No.1」吉田一将=都市対抗で活躍したプロ注目選手

楊順行

今秋ドラフト1位候補のJR東日本・吉田一将 【写真は共同】

 社会人野球の第84回都市対抗大会が12日〜23日の12日間、東京ドームで行われ、JX−ENEOS(横浜市)がJR東日本(東京都)を下して2連覇を飾った。
 夏の甲子園出場を懸けた高校野球地方大会と同時期開催の同大会。今秋のドラフトに向けては、桐光学園・松井裕樹に話題が集まるが、社会人のドラフト上位候補たちにも注目だ。

「間違いなく1位候補」 JR東日本の吉田一将

 3球三振! 圧巻の立ち上がりだ。第84回都市対抗、史上初めて前年と同じ顔合わせになったJX−ENEOSとJR東日本の決勝。JR・吉田一将は、ここまで3ホーマーのルーキー・石川駿を3球で料理したのを皮切りに、1回表のJX−ENEOSの攻撃は3者三振。「社会人ナンバーワン投手」とJX−ENEOS・大久保秀昭監督も認める実力を見せつけた。

 ルーキーだった前年も決勝に先発した吉田だが、6回途中で降板。チームに2年ぶり優勝をもたらすことはできなかったが、今季の成長は目覚ましい。新しく取り組んだツーシーム、精度を上げたスライダーにチェンジアップ。王子との初戦では、9回2死で降板したものの2安打11奪三振で無失点。準々決勝の日本製紙石巻戦は、8回1死まで完全試合ペースの2安打完封。表示が遅めの東京ドームのスピードガンでは、140キロ前後が多かったストレートだが、無安打に封じられた石巻の四番・伊東亮太は「真っすぐが完璧。なにもできなかった」と舌を巻いた。

 「間違いなく1位候補」と各球団のスカウトが口をそろえるのはもちろんだが、僕には自分なりの物差しがある。写真だ。良い投手ほど、各メディアが同じ一瞬を切り取って掲載することが多いのだ。高校時代の松坂大輔なら、三塁側から撮影したリリース直前の胸の張り。この吉田なら、ネット裏からのリリース直後。打者方向にぐいっと乗せてくる体重、腕の収まりどころ、視線の方向、グッとかみしめる奥歯、背番号の見え方……。190センチを越える長身、小顔は、絵に描いたようなピッチャー体型だ。美しく、理にかなったフォームだからこそ、各社が切り取る瞬間も一致するのではないか。

 決勝でも、これ以上ない立ち上がり。こりゃあ、しぶといJX−ENEOS打線も手を焼くぞ……と思った2回表だ。宮澤健太郎のピッチャー返しが、右ヒジ付近を直撃。手当てを受けて一度はマウンドに戻り、投球練習を行ったが、無念の降板となった。2年連続で準優勝に終わり、試合終了時にはベンチで号泣したが、大会前から「結果を残せば、プロの可能性が広がる」と語っていた吉田。3試合19回を投げて自責1というのは、十分すぎる結果じゃないか。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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