実力証明した「社会人No.1」吉田一将=都市対抗で活躍したプロ注目選手
今秋ドラフト1位候補のJR東日本・吉田一将 【写真は共同】
夏の甲子園出場を懸けた高校野球地方大会と同時期開催の同大会。今秋のドラフトに向けては、桐光学園・松井裕樹に話題が集まるが、社会人のドラフト上位候補たちにも注目だ。
「間違いなく1位候補」 JR東日本の吉田一将
ルーキーだった前年も決勝に先発した吉田だが、6回途中で降板。チームに2年ぶり優勝をもたらすことはできなかったが、今季の成長は目覚ましい。新しく取り組んだツーシーム、精度を上げたスライダーにチェンジアップ。王子との初戦では、9回2死で降板したものの2安打11奪三振で無失点。準々決勝の日本製紙石巻戦は、8回1死まで完全試合ペースの2安打完封。表示が遅めの東京ドームのスピードガンでは、140キロ前後が多かったストレートだが、無安打に封じられた石巻の四番・伊東亮太は「真っすぐが完璧。なにもできなかった」と舌を巻いた。
「間違いなく1位候補」と各球団のスカウトが口をそろえるのはもちろんだが、僕には自分なりの物差しがある。写真だ。良い投手ほど、各メディアが同じ一瞬を切り取って掲載することが多いのだ。高校時代の松坂大輔なら、三塁側から撮影したリリース直前の胸の張り。この吉田なら、ネット裏からのリリース直後。打者方向にぐいっと乗せてくる体重、腕の収まりどころ、視線の方向、グッとかみしめる奥歯、背番号の見え方……。190センチを越える長身、小顔は、絵に描いたようなピッチャー体型だ。美しく、理にかなったフォームだからこそ、各社が切り取る瞬間も一致するのではないか。
決勝でも、これ以上ない立ち上がり。こりゃあ、しぶといJX−ENEOS打線も手を焼くぞ……と思った2回表だ。宮澤健太郎のピッチャー返しが、右ヒジ付近を直撃。手当てを受けて一度はマウンドに戻り、投球練習を行ったが、無念の降板となった。2年連続で準優勝に終わり、試合終了時にはベンチで号泣したが、大会前から「結果を残せば、プロの可能性が広がる」と語っていた吉田。3試合19回を投げて自責1というのは、十分すぎる結果じゃないか。