“無用”のFIA国際法廷=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第8回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

ホワイティングへの温情の対価

 FIAと切り離されていない証拠が、チャーリー・ホワイティングに一切おとがめなしだった点だ。ピレリとメルセデスに今年のクルマを使ってのテストを許可したといわれるホワイティング。しかし、FIAが出したステートメントにはホワイティングの名前さえ載っていなかった。

 本当のところ、メルセデスはホワイティングからテスト実施のアドバイスを受けている。とすれば、ホワイティングも罰せられるべきだが、そうはならなかった。その裁定を裏読みすれば、メルセデスとピレリへの戒告だけという軽い罰は、FIAのホワイティングを罰しなかったお返しと理解して良いだろう。

ミシュラン“招致”の伏線?

 ただ、今回のFIA国際法廷へ呼び出されたピレリは何も疑惑はなしと自信を持っていただけに、出廷を大変不快に思っている。加えて来年のタイヤ供給会社としてFIAはピレリと契約を結んでいないが、それはわざと時間切れを迎えさせて、ピレリをF1から追い出すつもりなのかもしれない。

 テストに関する厳しすぎる制限や、ライフの短いタイヤの製造依頼など、FIAがピレリに投げる要求は無理なモノが多い。これは、ジャン・トッドFIA会長がピレリを追い出し、ミシュランの参入を期待しての措置……なのではないかといううわさもある。

 まあ、F1とはこんなものだ。政治が動き、権力が動き、金が動く。この中では金が一番綺麗に見えるから不思議だ。

<了>

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著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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