順調に見えるドイツ代表の不安な未来=予想されたU−21ユーロでの予選敗退

フランソワ・デュシャト

指揮官はグループリーグ敗退を予期していた

U−21ユーロではスペインに敗戦。CLで払しょくしたかに見えたトラウマにもまだ終止符が打たれていなかった 【Getty Images】

 アドリオン監督は、イスラエルの地が彼にとって、ワーテルロー(編注:ナポレオンの最後の戦場)となりうるとの認識を持ってユーロの舞台へと乗り込んだ。つまり、「生きるか死ぬか」という状況である。

 出場メンバー発表の時点で、言葉の端々に指揮官の覚悟は見て取れた。「死のグループ」となった厳しい組み合わせ抽選の結果により、アドリオン監督にとってはすでにグループ敗退も見えていたのだ。しかし、会見の中で、アドリオン監督はチームの状況について不満を漏らすことは許されなかった。不満はすなわち、レーブ監督に対する攻撃を意味するからである。

 ぱっとしないサッカーを展開することが憂慮されていたものの、スペインとオランダ相手の敗戦は、記録の上では接戦だった。だが『南ドイツ新聞』は、「未来に対するものというより、過去のこととして記憶されることだろう」と記した。

 オランダ戦の敗戦は、少し良くなる兆しが見えたころに、アディショナルタイムに決勝点を喫する「ドイツらしい」負け方で、痛手を与えるものだった。スペイン戦の黒星も、ドイツを痛めつけるには十分過ぎた。2008年のユーロ決勝以来、ドイツサッカー界は自分たちをスペインと比べ続けてきたからである。

 CL準決勝でスペイン勢から奪った2つの勝利によって、トラウマに終止符が打たれたかに見えた。だが、若きスペイン代表は、文字通りドイツ代表を置き去りにし、インターネット上には、フランシスコ・イスコ(マラガ)とその仲間たちが、ドイツの選手を取り残して走り去る様が、写真やビデオでシェアされていた。

ジャーナリストも不安視する未来

 ベルント・レノ(レバークーゼン)、ティモ・ホルン、クリスティアン・クレメンス(共にケルン)、トニ・ヤンチェク、パトリック・ヘアマン(共にメンヘングラッドバッハ)、エムレ・カン(バイエルン)といった選手が、このU−21代表には名を連ねていた。だが彼らは本当に、国際的にもトップクラスに達するだけのポテンシャルを秘めているのだろうか? スペインとオランダは、14年の夏を見据えて、ベストの選手たちをイスラエルに送り込んだ。特に若い選手たちにとっては、こうした大会での経験は大きく役立つ。その好例がイスコで、こうした状況下では原石がどれほど大きな成長を遂げるかを示している。マラガで頭角を表した才能はU−21ユーロのおかげもあり、来季よりレアル・マドリーのユニホームを身にまとうことが決まった。ビセンテ・デル・ボスケ監督率いるスペイン代表チームの来夏に向けての視界は、さらに良好となったことだろう。

 ドイツのA代表は、良い状態にあり、鍵となる選手たちも良い年代だ。コンフェデレーションズカップが終われば14年のワールドカップ(W杯)へ向けてのカウントダウンが始まる中、ドイツのジャーナリストの中には、ブラジル大会の後の見通しはどんなものなのかと問い始めている者もいる。問題を抱えているのはU−21だけではなく、U−19も同様なのである。

 今後の頼みは、ホルスト・フリュベシュだ。09年にU−21ユーロを制した指揮官で、かつてハンブルガーSVでプレーした同氏は、マッツ・フンメルス(ドルトムント)やマヌエル・ノイアー、ジェローム・ボアテング(共にバイエルン)、メスト・エジル、サミ・ケディラ(共にレアル・マドリー)、ベネディクト・ヘベデス(シャルケ04)のようなタレントを育てられるかもしれない。

 将来的に、現在のフル代表の選手に取って代わるような若きホープは、まだ現れていない。しかし、何よりもDFBは新しいスポーツディレクターの選定を、もっと急ぐべきだろう。議論している時間は、もうあまりないのだから。

<了>

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net

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