五輪候補スカッシュの現在と見据える未来
スカッシュだけで生活できるのは世界トップ20人
世界ランク2位グレゴリー・ゴルチエ(右)の年収は推定で2000〜3000万円 【フランス スカッシュ連盟】
またこの1年間負けなしで、目下世界一のプレーヤーとして絶大な人気を誇るラミー・アシュア(エジプト)は、この1年のワールドツアー獲得賞金が推定2400万円。スポンサー収入に関する情報は得られなかったが、ここに賞金と同程度の金額が加わると推定される。本人は「サッカーやテニスには遠く及ばないが、生活するには十分な金額」と語っており、現在の男子世界最高給選手と考えていいだろう。
一方で、協会からの補助金が多いのが、現在世界ランキング23位に位置するアジアのトップ選手オン・ベン・ヒー(マレーシア)。マレーシア協会からの補助金が年間約5〜600万円と高額で、ここに獲得賞金約3〜400万円、スポンサー収入約200万円、コーチング収入50〜150万円が加わり、年収は約1050〜1350万円と推定される。現在世界ランキング19位のミゲル・アンヘル・ロドリゲス(コロンビア)は、獲得賞金が約700万円で、ここにスポンサー収入、さらにコロンビア協会と、故郷の街の両方からの補助金が加わる。補助金は「スケジュールを提出して認可をもらうシステムで、必要経費のみ認められる方式だ」と明かしてくれた。
以上は、スカッシュだけで生活できる世界トップ選手の例。それ以外の選手は、常に金銭的な悩みを抱えながら活動を行うことになる。そこで、上記のような収入源のほかに、世界的に意外と多いのが「親の援助」。例えばメキシコでは裕福な家庭がスカッシュをプレーする傾向があり、トップ選手は親からの援助で活動するケースが多いという。
ちなみに日本では、協会から選手への補助金は支給されていない。日本のトップ選手である机伸之介、福井裕太らは、主にコーチングやスカッシュ仲間のカンパなどで資金をためて、世界ツアーPSAに参戦している。日本でも、家庭が裕福な場合は親の援助で活動するケースもあるが、そう多くはない。
米国で起こるもう一つの流れ
開催国フランスの人気選手、ティエリー・リンクー(左)とグレゴリー・ゴルチエ。取材中も常にサインを求められていた 【フランス スカッシュ連盟】
もし2020年の五輪種目に選ばれれば、スカッシュ界の経済事情はすぐに改善されるだろう。しかし、もしダメでもまた4年後がある。そのうちに五輪種目に選ばれる番が来るはずだ。そして同時進行で、米国がスカッシュの足場固めを行っている。日本ではコート減少の流れが続くスカッシュだが、未来は決して暗くない。
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