菊池雄星ついに覚醒!今季勝てる3つの理由
「ポーン、グーン、バチン」のリズム
渡辺監督(右)は今季の菊池に対して球の質、勝負できる球種の増加を評価している 【写真は共同】
菊池自身、「立ち上がりに苦労することがある」と自覚している。その一方で崩れずに修正し、勝ち星を手にできているのは「感覚の調整」をうまくできているからだろう。
「立ち上がりにリズムの確認をしています。ポーンと振りかぶって、足をグーンと上げて、リリースでバチンと投げる。そのリズムを出せるように。試合によって体の感覚が微妙に違うので、すぐにその日の感覚をつかめるようにしています。特に初回は気をつけますね。ポーン、グーン、バチンの音さえあえば、後は大丈夫です」
要は、自分に適した投げ方のコツをつかめてきたということだろう。頭で考える理想を、身体が自然と表現できるようになりつつある。そんな姿が炭谷には「のびのび」と映り、渡辺監督は「変なことを考えず、集中してバッターに対峙(たいじ)している」と見ている。
目標のふたケタ勝利…そしてその先へ
ペナントレースが始まる1週間前にブルペンで投げてみると、確かな手応えを感じた。今季初戦の後には「ここまで投げられるとは思っていなかった」と語っていたが、惜しくも9回1死にノーヒットノーランを逃した6月12日の中日戦では、1点リードで迎えた6回に代打で出てきた山崎武司をチェンジアップで空振り三振に仕留めた。2011年8月、通算400号ホームランでプロ初完封を阻止された相手にリベンジできた瞬間だった。
「プロに入って、最初にコテンパンにやられたのは今も強烈に残っています。大先輩なので、認めてもらいたい気持ちがありますね。2年前と変わったところを見せたかった。あそこは点差どうこうじゃなく、個人の勝負にいきました」
6球団から1位指名を受けた09年のドラフト会議でプロ入りし、迎えた4年目の今季。新球のチェンジアップを身につけ、「ポーン、グーン、バチン」のリズムで投げる左腕は昨季と比べ数段上のピッチャーへとレベルアップしている。
「来年から大学4年生がプロに入ってくるので、その前にもう一度、自分のポジションを確立するのが大事。同級生がプロに入ってくるまでに、ふたケタ勝っておくように」
開幕前から目標に掲げていた10勝まで、残り3勝。この勢いなら、オールスター前に達成することも可能だ。本人は決して口に出さないが、当然その先も見据えているはずである。
<了>