岩渕真奈、ドイツの地で見せた成長の跡=「女子サッカーの盛り上がりはまだまだ」

フランソワ・デュシャト

栄光や称賛にも浮かれることのない岩渕

日本女子サッカーのさらなる発展へ、岩渕(中央)はチームでも代表でも歩みを止めない 【Getty Images】

 周囲のサポートに助けられた岩渕だったが、慣れなければならないのは新しい環境だけではなかった。母国とは違うサッカーが待ち受けていたのだ。両国のクラブに所属しての違いを問うと、「パススピード、キック力、体格、すべてにおいて違います」と教えてくれた。それでも9試合に出場して4得点しているのだが、「まずは1部という舞台で、しっかりとチームとしても個人としても、結果を出していきたいです」としっかり足元を見据えている。そして、「代表ではしっかり中心になれるように、頑張りたいと思っています」と気持ちを新たにしている。

 世界の頂点に立ち、12年のロンドン五輪では銀メダルを手にした。多くの個人賞も手にしてきたタレントに、熱狂的なファンは彼女のキャリアをインターネットで追っている。Youtubeでは、「女性版メッシ」と彼女を称える動画がアップされている。だが本人は、「ちっとも自分のことをメッシだなんて思っていませんし、過去にいただいた賞も、もう過去の事なので、(気持ちを)切り替えています」と冷静だ。

 彼女はサッカーとともに生きている。それは、もしもサッカー選手になっていなかったら何をしていたかと問われても、「小さいころからサッカーばかりだったので、今考えても正直分かりません」とほかの選択肢が思い浮かばないくらい、サッカー漬けの毎日を送っている。これまでの歩みには、「ベレーザというチームを目標に育成時代からやっていて、今の自分があるのも育成時代のおかげだと思っています」と、感謝の言葉を述べる。

男子とはまだまだ人気の差がある女子サッカー

 そうしてともに歩んできた女子サッカーは、日本で突然注目を集めるようになった。11年のW杯と、12年のロンドン五輪における成功のためである。その熱狂の火付け役の一人である岩渕は、「W杯、五輪が終わった後の盛り上がりはすごかったです。私もその時は日本にいましたし、素直にうれしかったです」と振り返る。「ですが、今年に入ってあまり盛り上がっていないように思えます」と、今後は自らの手でさらにシーンを熱くする構えだ。

 おそらく、男子チームが世界最速で14年W杯ブラジル大会への出場を決めたことも影響しているだろう。岩渕も、その差を「女子サッカーが盛り上がってきたとはいえ、男子サッカーとは比べ物になりません」と認める。だが、いやだからこそ、「W杯で優勝できたことは、女子サッカーにとって大きなことでしたが、まだまだだと思っています」と気を緩めることなく新たな未来の創造へと向かうのだ。

<了>

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著者プロフィール

1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net

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